山口県連は安倍系勢力が弱体化で、後ろ盾なし

これまで何度もその発言が物議をかもしてきた杉田氏だが、自民党で議員を続けてこられたのは、安倍氏の強力な後ろ盾があったからだ。

「2012年の衆院選に維新から出馬して初当選した杉田氏ですが、14年に落選。その後、右派系人脈を通じて安倍氏の目に留まり、自民党山口県連入り。17年、21年には上位で名簿に登載された比例中国ブロックで、当選しました」(全国紙政治部記者)

安倍氏の死去後には、氏の選挙区だった山口4区で今年4月に行われた補選の候補者として一時、名前が取りざたされたこともあった。

「党の内規で、比例単独での名簿登載は原則2回までとされているため、杉田氏本人も選挙区からの出馬に前向きで、昨年12月には、山口4区内の自民市議の事務所に挨拶に訪れるなどしていました。
しかし、安倍後援会や安倍夫人・昭恵氏が杉田氏を候補として考えていた様子はありませんでした。杉田氏はもともと山口県出身でもありませんしね」(山口県政関係者)

安倍氏の死去後、山口県内の勢力図が様変わりしていることも、杉田氏にとっては逆風だ。

林芳正衆議院議員(本人Facebookより)
林芳正衆議院議員(本人Facebookより)

「もともと林芳正前外相の林家は地元のインフラ系企業をがっちりとおさえており、安倍家よりも林家が本流、名家でした。しかし、安倍氏が首相になると、状況が一変。
安倍氏の後援会メンバーは桜を見る会にも招待されていたにもかかわらず、林系は一切誘われないなど、露骨な林系への冷遇が続きました」(同)

こうした山口県内の力関係が一変したきっかけが、安倍氏の銃撃事件だった。
今年2月の下関市議選では、安倍系の現職2人が落選する一方、林系の現職は全員当選するなど、安倍系にとって厳しい結果に。
県内の安倍系の国会議員には、安倍氏のおいの岸信千世氏もいるが、当選1回で、安倍氏の影響力には遠く及ばない。

さらに次期衆院選では、山口県内の小選挙区は4から3に減る。林氏と、安倍氏の後継の吉田真次氏がともに立候補を希望した新3区では林氏が公認候補となり、吉田氏は比例単独での立候補をすることに。

「県議会も林系のドンが牛耳り、いまや安倍系はほぼ力を失いました。林氏は首相率いる岸田派に所属していますし、林系が安倍氏の庇護を受けてきた杉田氏に配慮する必要性は何もありません」(前出の山口県政関係者)