最終回はいつも、三者三振で試合を締めた
今や日本球界の話題を独占するロッテの佐々木朗希投手。だが、彼に負けず劣らず、野球ファンの注目を浴びる選手がいる。「十年に一人の逸材キャッチャー」との声もかかる佐々木の女房役、松川虎生(こう)捕手(18)だ。
経験が必要とされるキャッチャーというポジションで、高卒ルーキーが開幕マスクを任されるということだけでも凄いのに、佐々木の160キロ超のストレートや150キロ台の高速フォークをいとも簡単に捕球する好リードぶりで、佐々木の完全試合を演出した。
極めつけは4月24日の対オリックス戦で見せた神対応。ボール判定に不満げな表情を見せた佐々木に、白井主審が険しい表情でマウンドに詰め寄ろうとするや、松川はその前に立ちふさがってなだめ、佐々木を見事に守り切ったのだ。白井主審の年齢は44 歳。高校を卒業したばかりの18歳ルーキーができる対応ではない。
いったい、松川とはどんな選手だったのか? その大器ぶりを知る恩師たちに話を聞いた。
「抜群の野球センスで、とくに守備については教えることがなかった」と証言するのは、松川が小1から小4まで所属した少年野球チーム「ワンワンスポーツクラブ」の関係者だ。
「体とグラブを柔らかく使ってさっと捕球してさっと投げる。その動きがとにかくスムーズでした。グラブさばきやハンドリングの基本がすでにできていて、センスを感じました」
どんな強い打球も怖がらずにさばけるため、チームではもっぱらサードとキャッチャーの守備につくことが多かった松川だが、肩もめっぽう強く、最終回には投手に指名され、試合を締めくくることも。
「2学年年上のチームと対戦するときは強い打球が飛んでくるサードをまず守り、そして最終回にポジションを変えてピッチャーを務め、三者三振でゲームを締めくくるというのが常でした」
小学5年生から中学1年までは地域の強豪、泉佐野リトルへ。その当時、監督だった佐藤克士現会長が語る。
「守備が素晴らしいとは聞いていましたが、会ってみるとバッティングも非凡でした。うちのグランドは打球が外野のすぐ横を走る高速道路に飛び込まないように、ホームベースから65mの地点に高さ15mの外野フェンスを設けてあるんですが、虎生はチーム参加から数日後には、打球がフェンスを超え始めました。
高速道路を走る車に当たると危険なので、仕方なく虎生には竹バットの使用を命じました。竹バットだと金属バットほど球は飛びませんから。本人は『何で僕だけ竹バットなん?』とむくれていましたけど(笑)」