もはや限界、ボロボロの体

ただ、その後も二人で挑み続けたが、煙が出るところまではいけても、なかなか火種ができない。失敗するたびに、火きり板に新しい窪みをグリグリと彫らなければならず、その労力に気分は萎えていくばかり。

「くそーなんでだ……」

「こんなにシンプルなのに、原因がわからないな」

僕たちは途方に暮れていた。手のマメは潰れ、手のひら全体にアザができたような状態で、火きり棒を挟んだだけで激痛が走った。これまでほとんど眠っていた腕や胸の未知の筋肉が悲鳴を上げ、発見された。もはや肉体の限界だった。

火種ができないのは自分たちの筋力不足なのか、木の種類が間違っているのか、はたまた天気や湿度のせいなのか。こんなに単純な行為なのに、考えられる要因が多すぎて、どうしたらいいかわからなくなっていた。

結局この日も、翌日も翌々日も、火種はできることなく、4連休は終わってしまった。

原始の火起こしに挑戦して棒を回し続けて2ヶ月、「週末縄文人」が立ち上る“炎”のなかに見たものとは‥‥後編_2

自分も縄文人だったはずなのに

ここで少し、YouTubeでは公開していない舞台裏の話をしよう。4連休を終え、疲労困憊で仕事に戻ってからも、僕たちはずっと火起こしについて考えていた。昼休みや仕事帰りに顔を合わせては、ああでもないこうでもないと仮説を立てて話し合っていたのだ。そんなある夜、2人で仕事から帰っているとき、僕は急に不思議な感覚にとらわれた。

「なんか今さ、なんで自分は火が起こせないんだろうってすごく不思議な気持ちになってきた」

「考えられる要因が多すぎるもんな」

「ううん、そういうのとは違ってさ。辿っていけば自分も昔は縄文人だったはずなのに、なんで火起こしのやり方を忘れちゃったんだろうって。だって20%くらいは縄文人のDNAを受け継いでるはずなんだから。覚えてないことの方が不思議に思えてきた。絶対つけられるはずなんだよ。思い出せ!」

このとき、突然スピリチュアルがかった相方の話を縄がどんな気持ちで聞いていたのかはわからない。普通に考えたら怖い。僕だって根拠のないおかしな話だとは自覚している。ただ、この不思議な感覚に包まれたまさにそのとき、折れかけていた心が妙に自信を取り戻していくのを感じたのだ。