MBはなぜ、そこまでこち亀を愛するのか
――MBさんがそこまでこち亀を愛する理由は何ですか?
ストーリーがいい意味である程度パターン化されているので、読むだけで心が安定するんです。両さんが悪いことをしてどんどんエスカレートしていき、最後にはごまかしが効かなくなって部長を怒らせ、『両津はどこだ!?』となる、あの感じ(笑)
――お約束のコントのようですよね。
他にもいくつかのパターンがありますが、いずれにしても偉大なるマンネリですよね。その反復の中で毎回新しい要素が加わりつつ、一定水準以上の面白さを保つ。感情が大きく揺さぶられることなく、サプリのように安定感を持ってずっと楽しめるこち亀は、秋本先生が生み出した究極のエンタメだと思います。
――僕も小学生の頃からのこち亀ファンですが、子どもが読んでも分からないことを、秋本先生はときどきぶっ込んできますよね(笑)。
そこがまた、こち亀の好きなところでした。大人の世界が垣間見えるんですよね。ポルシェやカウンタックなど車の話とか、カメラはライカがいいとか、リアルタイムで読んだ子どもの頃は、何のことやらさっぱり分かりませんでした。当時はネットもなかったから、すぐに調べられないし。
――カルチェのライターとか(笑)。
星逃田(ほしとおでん)がなくしたカルチェのライター(笑)! あの回は最高です。星が『カルチェのライターを見つけたやつは連絡をくれ』と読者に呼びかけるんですよね。思えば、僕がカルチェというブランドを初めて認識したのは、あのときでした(笑)。
――今ではファッションに精通するMBさんが、こち亀でカルチェを知ったとは(笑)。
そうそう(笑)。アルマーニもそうです。白鳥麗次がよく口にするブランドでしたから(笑)。改めて考えてみると、僕の文化的インストールは、本当にこち亀からが多いですね。大人がかっこいいと思い、興味を持っているものをいろいろ学ばせてもらいました。大人の世界を覗き見する道具という役割もあったんですよね。
――今回、MBさんには特に好きな回を5本選んでもらいましたが、そのラインナップを見ると、ギャグ全開の笑える回が多いですよね。こち亀ファンには、泣ける話をあげる人も多いのですが。
確かにそうですね。もちろん浅草物語や勝鬨橋の話など、泣ける話も好きなんですけど、5本だけと言われれば、僕は大笑いできる回を選びます。でも、このリクエストは難しかったですよ。あとから考えて、『しまった、あれも入れれば良かった』って、絶対思いますから。
――こち亀愛深きゆえの悩みですね(笑)。そういう葛藤も踏まえ、選んだ5本についてコメントをお願いいたします。