「オレ、動物のお医者さんになる!」
翌日、幼稚園からの帰り道。
「パパ、いいこと思いついた。オレたちさ、ふたりで困っている動物を助ける仕事をしない? 困っている動物を助けるっていい仕事だと思うんだ!」
「そりゃ名案だ。チビは動物が好きだし、動物のことをよく知っているし、困っている動物の気持ちもわかるもんね!」
そこで、パパのスケベ心がちょっと顔を出した。
「ケガや病気の動物を助けてあげるなら、チビは動物のお医者さんになるのがいいんじゃないか? パパは昔、動物のお医者さんになりたいと思っていたことがあったんだよ」
「そうか! オレ、動物のお医者さんになる!」
獣医さんは僕の憧れの職業のひとつ。チビが獣医さんになってくれたらうれしい。
ケガした動物つながりで僕は思い出した。
「そういえば、今朝、家の前に潰れたカエルの死体があったよ。内臓が飛び出ててキモチ悪いの……」
「じゃ、それ、埋めてあげようよ!」
チビが言う。
「えっ? マジ?」
露骨にイヤそうな顔をする僕。
「うん、だってオレたち困っている動物を助けるっていま言ったじゃん!」
真剣なまなざしで詰め寄るチビ。
「そっ、そうだったよな……」
つくり笑いを浮かべるパパ。
あのグロテスクな死体を拾ってお庭に埋めるのかぁ。
イヤだなぁ。
★ふりかえり
手負いのザリガニこそ助けてあげなきゃいけないって発想には本当に衝撃を受けました。なんでそんな簡単なことがわからなくなってしまっているんだと自分を嘆きました。子育てって、大人になっていくに従って見えなくなってしまう大事なことを思い出させてくれる営みでもあるんですね。