食欲が我慢できないのはデブ舌になっているから
「おいしいものには目がないし、我慢したくないんです」
年齢を重ねても、食事をおいしく食べられることはとても素敵なことですし、自分の口から栄養を摂取できることは、健康長寿の観点からも大切なことであるのは間違いありません。
しかし、先ほども述べたように、人は食べたもので不健康にもなってしまいます。
たとえば、太っている人にありがちな食の傾向として、摂取する栄養素が糖質や脂質が多いものに極端に偏っていて、それらを代謝するのに必要なビタミン類が足りていないということが挙げられます。
量はしっかり食べているのに必要な栄養素が不足し、ある種、栄養不足のような状態に陥ってしまっているのです。
患者さんのお話を聞いていると、肥満で悩む人の多くが、丼ものやカレーライス、パスタ、ラーメンなど、炭水化物をメインとした単品メニューを好む傾向があると感じています。
こういった食事の問題点は、摂取する栄養素が糖質と脂質に偏ってしまうことと、得てして高カロリーになりがちな点です。栄養素が偏ると代謝に必要な栄養が不足して太りやすくなってしまいますし、摂取カロリーが消費カロリーを上回れば、当然ですが太ります。
肥満はメタボリックシンドロームや生活習慣病を招く最大の要因ですから、この問題を見過ごすわけにはいきません。
ただ、誤解しないでいただきたいのは、こういったものを食べるのが悪いわけではなく、問題なのはその頻度。
週末にご褒美として食べるくらいなら、摂取した分のエネルギーを余らせることはほとんどないと思いますが、平日に3回も4回も食べているようだと食べた分のエネルギーを使い切ることができず、じわじわと体重は増えていってしまうでしょう。
「そんなこと、頭ではわかっているけど、食べたくなっちゃうんです」
ここまで読んで、そんな感想を持たれた方もいるのではないでしょうか。ちょっと厳しい言い方にはなってしまいますが、その言い訳をしてしまう時点で、デブ舌になってしまっている可能性は高いです。
デブ舌というのは、味の濃い食べ物やこってりした食べ物こそがいちばんおいしいと感じてしまう味覚のこと。
デブ舌の持ち主になってしまうと、素材を活かした料理や出汁を効かせたような薄味のおかずでは満足ができず、砂糖や塩、ケチャップ、マヨネーズなどの調味料をがっつり使った甘辛こってり味に魅力を感じるようになってしまうのです。
だから、頭では野菜系メニューなどがいいとわかっていても、味を感じる舌や脳が拒否してしまい選べないのです。栄養の偏りを正そうと思ってどれだけ心に強く誓っても、問題の根っこは意思ではなく味覚にあるので、いつまで経っても「わかっちゃいるけどやめられない」状態が続いてしまいます。