「防球フェンスの高さは22mで適切」の怪しい背景

この背景を紐解くため、筆者が入手した別の開示文書を紹介する。実は、神宮外苑再開発にあたって東京都は景観保護の観点で銀杏並木沿道の施設は「銀杏並木の高さ以下に制限」と「まちづくり指針」で定めている。

景観保護の観点から、新神宮球場は隣接する銀杏並木の「高さ以下」に制限されている。 出典:開示文書 公園まちづくり計画提案書(2020年2月18日提出)「公園まちづくり制度提案資料」P168
景観保護の観点から、新神宮球場は隣接する銀杏並木の「高さ以下」に制限されている。 出典:開示文書 公園まちづくり計画提案書(2020年2月18日提出)「公園まちづくり制度提案資料」P168
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この文言があるために、新球場の防球フェンスは、隣接する銀杏並木の高さ(22〜25m)を超えることはできない。結果、事業者は「防球フェンスの高さは22mで適切」という結論を導くために、恣意的な打球の弾道シミュレーションを行ったのではないか。

これだけでも新神宮野球場の設計の“怪しさ”が見てとれるが、問題は他にも山ほどある。後編ではデタラメな完成予想図や、声出し応援が現在よりも制限される「騒音問題」を取り上げる。

#2 照明塔、バックスクリーンのない「完成予想図」に音出し応援新神宮球場は本当にプロ野球の興行を行えるのか? に続く

取材・文/犬飼淳