「森さんがペラペラと……」安倍派内から不満も、どこ吹く風の森氏
「これから本当に正念場。最大派閥として結束を固め、安倍総理がまいた政策の種を花を咲かせる」
31日の総会後、新しく座長に就任した塩谷氏は記者団の取材に対し、淡々と答えた。
その言葉通り、安倍氏の突然の死去以降、1年以上決まっていなかった体制がようやく固まった形だが、この最大派閥を待ち受けるのは、一気に瓦解する可能性もある100人規模の集団をまとめていくという正念場だ。全国紙政治部記者は「派閥の名称は引き続き安倍派を名乗ることになりましたが、これまでも、これからも、事実上の『森派』と言えるのではないでしょうか」と解説する。
「森氏は北國新聞の連載『総理が語る』で、下村氏が森氏に『何とか私を会長に』と土下座し、『帰ってくれ』と追い返したことを暴露しました(※下村氏は『AERA』のインタビューで土下座を否定)。塩谷氏の座長就任が固まった直後も北國新聞の取材に『ようやく石段を一つ上がった。下村さんを外したという大きな一段だ』と発言し、党内からは『さすがに下村さんがかわいそう』と、もはや同情の声も出ています」(全国紙政治部記者)
森氏は、自身が大会組織委員会会長を務めていた東京オリンピック・パラリンピックの準備をめぐって、新国立競技場の建設見直しなどで自身の顔をつぶした形となった、当時の文科相・下村氏を嫌い、常任幹事会メンバーから外すよう求めていた。そのため、今回の人選は森氏の意向をくんだものと言える。
松野博一官房長官、西村康稔経済産業相、萩生田光一政調会長、高木毅国対委員長、世耕弘成参院幹事長の5人衆にとっても、「人望がないのに、すぐ目立とうとする。当選回数が多くても兄貴だとは思えない」(安倍派議員)と目される下村氏を外す思惑は、森氏と一致していた。
それだけに、世代交代を狙う5人衆はこれまで森氏と頻繁に面会。森氏の意向を笠に着て、5人による集団指導体制をめざしたが、あまりの森氏の介入に5人衆の一人は「森さんからはしょっちゅう連絡がくる。それだけ気にかけてくれているんだろうが、森さんと二人きりで話したことを、外でペラペラとしゃべるんだよ」とうんざりした表情を見せた。