老後資金は「夫婦二人で1400万円」が目安
老後のお金の問題と言えば、みなさまの印象として残っているのが「老後2000万円問題」でしょう。
ただ、この「2000万円」という数字について、あまり気にする必要はありません。
なぜなら、この数字は、2017年の高齢夫婦無職世帯の平均収入から、平均支出を差し引くと、毎月5.5万円分赤字になるため、毎月の赤字を30年間分として、総額2000万円が足りなくなるという計算を元に、導きだされた平均値に過ぎません。
どこに住み、どんなライフスタイルを送るかによって、生活費は違います。だから、あやふやな「2000万円」という数字に心を乱す必要はありません。
先にも述べましたが、人間は年を取ると、お金が若い頃ほど必要ではなくなります。だから、年金が支払われている人であれば、十分にそれで生活できます。
とはいえ、「老後資金が足りなくなったら怖い」という方もいるはずです。
そこで参考になるのが、以前、経済ジャーナリストの荻原博子さんと対談した際に教えていただいた、「実際に介護を経験した人がかかった費用は、一人平均600万円」という数値です。
医療費にしても、日本には高額療養費制度があるため、仮に高額な医療を受けてもさほどお金がかからないので、費用として200万円ほど見ておけば良いとのこと。
つまり、介護費用二人分で1200万円と医療費200万円分。夫婦で合計しても1400万円あれば、最低限の介護・医療用の蓄えとしては十分だそうです。さらに、家を売るなりリバースモーゲージなどを使えば貯金はそれ以下でもいいことになります。
私自身は「最悪、生活保護というセーフティネットがあるのだから、貯蓄はしなくても大丈夫」と思っていますが、仮に「老後が心配」という方は、この数字を一つの目安にしてみてはどうでしょうか。
将来を不安に思ってお金をため込んでも、一番楽しめるタイミングに使わないのはもったいない。体が動かなくなってから、「あれに使えば良かった」「こんなことをしてみたかった」と思っても遅いのです。
人間はいつ亡くなるか分かりません。何歳まで生きるか分からないからこそ、不安に駆られてお金をため込んでしまう。でも、お金はあの世には持っていけません。先のことは心配し過ぎず、幸福感を高めることを優先してほしいと思います。
文/和田秀樹 写真/shutterstock
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