子供に遺産を遺す必要はない

親の財産を当てにしない代わりに、あなた自身が子供に財産を残す必要もありません。

私が60代の患者さんによくアドバイスする言葉があります。

それは、「ご自身の資産は、生きている間に自分のために使いきってください」という言葉です。

先祖代々の土地をはじめ、代々受け継いできた資産は別かもしれませんが、ご自身で稼いできたお金であれば、それは後の世代に資産として残す必要はありません。なぜなら子供にお金を残すと、財産トラブルになることが多いからです。

私自身がこれまで見てきた高齢の患者さんの親族の人間関係トラブルは、ほぼ大半が相続についてです。お子さんが一人だけならばいいのですが、複数人いる場合は、少額であってもケンカが発生しがちです。

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お金ならまだ均等に分けることができますが、不動産の場合は、なかなか分けることも難しいのです。仮に法律の規定どおりに均等に兄弟間で分けられたとしても、何らかの不満は発生します。

「これまで私が介護を担当してきたのに、どうして他の人と同じ金額なのか」

「親から、兄ばかりかわいがられていて、いつも良い思いをしていたのだから、もっと遺産は減らしてもいいんじゃないか」

「うちの子供よりも、姉の子供のほうが学費の支援をしてもらっていた金額が大きい。あのときの学費分を、私の遺産の取り分に加えてほしい」

など、兄弟姉妹間でこれまでたまっていた恨み、つらみが、相続をきっかけに噴出して、仲がこじれてしまうのです。仮に親族同士では話がまとまっていても、そこにお互いの配偶者が入ってくると、余計に事態は悪化します。実際、相続をきっかけに絶縁したという兄弟姉妹は珍しくありません。

こんな様子を目の当たりにしてきたこともあり、私自身も、子供に財産を残す気はありません。実際、同じように考える人は多いようで、世界一の投資家と言われるウォーレン・バフェットやマイクロソフトのビル・ゲイツ、アマゾンのジェフ・ベゾスなど、世界のお金持ちたちも、「子供には必要以上の財産を残さない」と明言しています。