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年を取ってからは、多少血圧が高いほうが健康?

健康診断の正常値にこだわり過ぎ、逆効果になる代表例と言えば「血圧」でしょう。

血圧は、140/90mmHgが一般的な上限値とされています。世の中では高血圧は良くないとされているので、仮に141mmHgという基準値から少しだけ高い血圧が測定された場合、多くの人は少しでも数値を下げようと一生懸命になります。

でも、血圧が高いと本当に健康や寿命に害を及ぼすのかというと、現代の医学では未知の部分も多いのです。むしろ、年を取ってからは、多少血圧が高いほうが健康であるとも私は思っています。

まず、年を取ると若い頃よりも血管内部が細くなるので、血流が悪くなります。その細い道になんとか血液を通すには、血圧が高いほうが都合が良く、全身の血流が良くなります。

私自身、薬を飲まないと200mmHgを超える高血圧の持ち主ですが、正常値に近い140mmHgまで血圧を下げると頭がうまく回らず、調子が悪いのです。

そこで、正常値よりもやや高めの血圧160〜170mmHgを維持するように服薬していますが、毎日、朝から晩まで仕事ができるほどに元気です。

もし血圧を下げる薬を飲まれている方の中で「この薬を飲むと頭がぼんやりする」「この薬を飲むと調子が悪い」などという徴候があるならば、自己判断でその薬は飲まないと決めてもいいのではないでしょうか。

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医者の判断よりも、自身の経験則のほうが勝っている場合もある

多くの人が異常値を正常値に戻すべく薬に頼ろうとするのは、「人間は健康でなければならない」という考えに固執してしまうという背景があるのでしょう。

でも、健康でなければいけないというストレスにさいなまれ、食べたいものを食べず、やりたいことに挑戦できないほうが、意欲も衰えるし、活動も減り、身体機能も衰えてしまいます。そもそも健康というのは、基準値が正常ということではありません。

高齢になったら、自分自身の不自由と一緒に生きていくのは当然のこと。

もし、いまのあなたの体がどこにも不調がないのなら、健康診断の数値に過敏になる必要はないのです。

繰り返しになりますが、体には個人差があります。

60代まで自分の体と上手に付き合って生きてきた人ならば、どうしたら調子が良くなるかは、医者よりよく分かっていると言ってもいいくらいです。医者の判断よりも、ご自身の経験則のほうが勝っている場合もあるのです。

「いまからケアしておかないと将来が心配だ」という方もいるかもしれません。ですが、医学は目覚ましいスピードで進化しています。

10年、20年後には、医学がいまよりもっと進歩していて、iPS細胞を用いて動脈硬化が治ったり、腎臓などの内臓が代替可能になる可能性も十分にあります。

そう考えると、将来を気にし過ぎていまをストレスフルに過ごすよりは、未来の医学に期待して、食べたいものを食べ、やりたいことをする人生を選ぶことも、一つの選択ではないでしょうか。