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親の財産は当てにせず親子円満

60代くらいになると、親御さんを亡くされる方も増えてきます。その際に問題になるのが、「遺産相続」です。相続では、どんなに仲の良い家族でも、誰が何をもらうのか、揉めることが大半です。

推測ではありますが、80代、90代で親が亡くなったとき、子供は60代前後です。定年退職も控え、老後不安を抱えている中、受け継げる財産は少しでも多く欲しいという気持ちが、前面に出てしまうからなのでしょう。

ただ、親の財産は当てにしないほうが円満な人生を送れるように私は思います。

60歳からのお金にまつわる“本当に幸せな結末”…老後資金は「夫婦二人で1400万円」が目安、子どもへの遺産も考えなくていい_1
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以前、私の病院で出会った女性の患者さんの中には、こんな方もいらっしゃいました。

その方はすでに夫とは死別していましたが、ご自身名義の不動産を持っており、介護に困ったらこの不動産を売って有料老人ホームに移れば良いだろうと考えていたそうです。しかし、いざご自身に介護が必要な段階になっても、子供たちはなかなか有料老人ホームに入れたがらないのです。

そして、親である患者さんが困って私に相談してきたので、私はお子さんに「なぜお母様を老人ホームに入れないのですか?」と質問してみました。

すると、そのお子さんはこう答えました。「先生はご存じないんですか?有料老人ホームは10年償還ですから、今後10年間、母が生きた場合は1円も返ってこないんです。それはもったいなくないですか?」と。

私としては、「不動産はあなたのものではないし、親が頑張って稼いで建てたのだから、好きなように使わせてあげてください」と言ってやりたくなりましたが、こんなお子さんは決して少数ではありません。

本来であれば、子供は親には「お金を使って、残りの人生をもっと楽しんでください」と言うぐらいがちょうど良いのです。

自分に残る財産がいくらあるかということを計算し始めると、親の行動がいちいち気になって、口をはさみたくなってしまう。そんな親子関係は、双方にとってつらいものです。

私は、常日頃から公言していますが、相続税は100%でいいと思っています。そうなれば、年配になればなるほどにお金をどんどん使うようになるので、日本経済も円滑に回るはずです。