原作者直伝! 山暮らしのライフハック

満島 あのー、質問があるんですけど。僕、沖縄の海の近くで生まれ育ったので、山の田園地帯の生活イメージがないんです。どういう空気感なんですか?
池井戸 めちゃくちゃ緩いですよ。ゆるゆるで、適当です。
一同 適当!
池井戸 何しろ、庭で普通に食べ物が採れたりしますからね。タケノコを見つけて明日の朝採ろうと思ってたら、先にイノシシに取られてしまったとか。あとは、川でウナギを捕ったり、地蜂を捕ったり……地元では「ヘボ」って言うんですが。
岡部 あ、小説に出てきたやつだ。
梶原 食べるんですか? 蜂を?
生瀬 長野とかでは聞きますよね。蜂の子でしたっけ? 甘露煮みたいなやつ。
池井戸 ええ。弁当に入れてくる同級生もいました。
中村 食べるシーン作りますか、善さん。
梶原 え、まあ、あってもいいんじゃない?(やや動揺)
中村 フフフ、平然と食べてくださいよ。
満島 あと、山暮らしでの危険ってどんなことですか? 小さい頃から「気をつけろ」って言われてることとか。
生瀬 やっぱり、マムシとか。
池井戸 そうですね。夏休みに入る前などによく言われたのは、夜、ホタルを見に行くとき、暗闇で点滅しているのはホタルで、光ったままなのはマムシの目だから、動かないのには気をつけろと。
一同 怖ぇー!
橋本 そんなにクリアに違いがわかるものなんですか?
池井戸 ええ。ホタルの光はホワッとしていますが、マムシはギラッとしているので、それには絶対に手を出しちゃいけない。あともうひとつ、寝ているときでも、これが聞こえたら絶対に起きないといけない音というのがあります。
一同 ?
池井戸 ガサガサ、という音と、ボタッという音。両方ともムカデです。このくらい(両手を体の前で広げる)の。
一同 えー!
山本 (手で真似をする)こんな?
池井戸 そう。この音がしたら何がなんでも起きて退治しないといけない。噛まれると、すごく痛いですから。
中村 ムカデ、桜屋敷でも出ましたよ。でも僕、ぜんぜん平気なんで。虫も。
岡部 へぇー、役とは違うんだ。
梶原 じゃあ、出たらお願いね(笑)。
満島 やっぱ、海辺とはかけ離れてる……。でも、住んでみたくなりました。
梶原 僕も。渋滞なしで通えたらねぇ。
山本 僕は郊外に旅行に行くこともあるんですが、やっぱりいいですよね。最終的には都会とどっちで暮らそうかなと思っているくらい。
中村 桜屋敷の書斎で机に座って撮影の準備を待っていると、すごく静かで、何ていうか、窓から見る風景が止まってるんですよね。遠くの木が風で揺れたり、鳥がたまに横切ったりする以外、動くものがない。それが、都会とはいちばん違うなと思います。
生瀬 静かだよね、確かに。
梶原 でも、俺たちみたいなのが集まっちゃったら、うるさくなるだろうなぁ。
一同 ハハハ!
池井戸 静かだけど、のんびりしすぎて小説を書く気にはならないですね。それに、すぐ誰かが訪ねてくるし。
満島 「潤、いる?」って?
生瀬 ああ、勘介みたいなヤツが(笑)。

盛り上がりは、きっと画面から伝わる

――誰かが話せば誰かが突っ込み、笑いが起こる。村の寄合さながらの愉快なおしゃべりは深夜まで……というわけにもいかず、撮影の幕間トークはそろそろお開きに。最後は、これからの見どころ、推しどころを、皆さんからひと言ずつ。

生瀬 風景はゆったりしているんですが、話がスピーディーにどんどん展開していくのは、連続ドラマならではの面白さ。ぜひ最後までじっくり見て楽しんでいただきたいと思っております。
山本 すごくメリハリのある展開ですよね。そして、シリアスにもギャグにも振り切れる素晴らしい俳優たちが揃っていて……いい意味で、流行り者もいないし。
一同 こらこら(笑)。
山本 僕、自分が出ていなくても絶対に注目する作品だと思っています。振り幅、楽しみにしていてください。
橋本 ストーリーも、原作とはまた違った方向に振り切っていきますからね。テレビ的に、とっても面白いものになる予感がしています。何より、演じている僕ら自身が盛り上がっている。このムーブ感が、画面から伝わることを信じて。
梶原 うん。こういう、大勢の人間の会話から人間模様が見えてくるドラマ、僕も大好きです。我々は余計なおしゃべりも多いんですけど(笑)、それがチームワークにもつながっていると思うので。
岡部 川口(春奈)さんと一緒のシーンもまだ撮っていないので、彼女が入ってどんなふうに変わるのかも、楽しみにしていていただけたらと。
満島 えー、僕らの世代って、故郷とか家族とか先祖っていうものに対して、ちょっと縁が薄くなってると思うんですよ。それに、スマホ画面上での会話が増えていて、地域にいる人を家族のように慕って話すことも少なくなっています。どうにか人と人とのつながりの大切さを発信できないかなと思っていたところ、このドラマはまさにぴったりじゃないですか。
一同 (頷く)
満島 でしょ? だから、この作品を見て、「ちょっと田舎に帰ってみようかな」とか「うちの地元にも消防団ってあるのかな」とか、思ってもらえたら嬉しいな……。消防団だけじゃなく、守っている大切なものって他にも絶対あると思うので、コロナ禍の間に寂しい思いをしたぶん、そういう忘れかけていた大切なものを思い出していただけたら! と、思っておりますので! 熱くしましょーう! この夏を!!
中村 ほぼ川平(慈英)さんですね。
一同 ハハハハ!
梶原 沖縄ってこういう人しかいないの?(笑)
中村 この作品、「田園ミステリー」と銘打ってますけど、夏の野山の風景とか、匂いとか湿度とか、誰もが共有している原風景……とまでは言えないかもですけど、それに近いものがある気がするんです。だから、安心してちょっとホッコリできて、で、おかしいけど絶妙にチャーミングで憎めない人々と戦慄のミステリーへ……多くの人が知らず知らずのうちにのめり込める間口の広さと、出口の確かな細さ、そういう深い魅力を目指してやっていきたいと思ってます。
池井戸 ありがとうございます。田舎の風俗を書いておきたいという気持ちで書き始めた原作ですが、消防団もまさにその風俗のひとつ。そして、これから先、消防団が主役のドラマはたぶん作られない気もするので(笑)、「消防団といえばハヤブサ」と呼ばれるような、貴重な作品になっていくのではないかと……。
一同 おお〜(拍手)。
池井戸 その意味でも、皆さんに面白いものにしていただけることを大いに期待しています。よろしくお願いします。
一同 頑張りまーす。
梶原 さ、次はツチノコ探しだ。
満島 そうだ、今週末じゃないですか! 
中村 晴れてくれ〜!

「小説すばる」2023年9月号転載

「煙も虫もどんと来い! われらハヤブサ消防“劇”団」ドラマ『ハヤブサ消防団』放送記念 池井戸潤 キャスト大座談会_6
小説『ハヤブサ消防団』特設サイト
「煙も虫もどんと来い! われらハヤブサ消防“劇”団」ドラマ『ハヤブサ消防団』放送記念 池井戸潤 キャスト大座談会_7
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木曜ドラマ「ハヤブサ消防団」

【毎週木曜】よる9:00 テレビ朝日系にて放送中

出演 中村倫也 川口春奈

   満島真之介 古川雄大 岡部たかし 麿赤兒

   梶原善 橋本じゅん 山本耕史 生瀬勝久

脚本 香坂隆史  演出 常廣丈太/山本大輔  音楽 桶狭間ありさ

主題歌 ちゃんみな『命日』(NO LABEL MUSIC / WARNER MUSIC JAPAN)

制作協力 MMJ  制作 テレビ朝日

なかむら・ともや ◆ 1986年東京生まれ。ドラマ「石子と羽男−そんなコトで訴えます?−」、「仮面ライダー BLACK SUN」、映画『ハケンアニメ』、ミュージカル『ルードヴィヒ~Beethoven The Piano~』、舞台『ケンジトシ』など、幅広く活躍。著書に『THE やんごとなき雑談』などがある。池井戸潤原作ではテレビドラマ「下町ロケット」に出演した。9/29公開の映画『沈黙の艦隊』、11月から上演の舞台『OUT OF ORDER』への出演を控える。

みつしま・しんのすけ ◆ 1989年沖縄県生まれ。テレビドラマ「梅ちゃん先生」「BG~身辺警護人~」、映画『三度目の殺人』、舞台『ハムレット』などへの出演や、アニメ映画『ひるね姫~知らないワタシの物語~』では声優を担当。池井戸潤原作では映画『アキラとあきら』に出演した。出演映画『キングダム 運命の炎』が公開中。

おかべ・たかし ◆ 1972年和歌山県生まれ。大河ドラマ「八重の桜」「青天を衝け」、テレビドラマ「エルピス−希望、あるいは災いー」、配信ドラマ「First Love 初恋」、映画『踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望』などに出演。23年度後期NHK連続テレビ小説「ブギウギ」に出演。

かじはら・ぜん ◆ 1966年岡山県生まれ。テレビドラマ「鎌倉殿の13人」「ファーストペンギン!」「エルピス−希望、あるいは災い−」、映画『記憶にございません!』『マスカレード・ホテル』『湯道』『ロストケア』『大名倒産』などに出演。最新出演映画『リゾートバイト』が今秋公開予定。

はしもと・じゅん ◆ 1964年兵庫県生まれ。1985年の舞台『銀河旋風児SUSANOH』より劇団☆新感線に参加。テレビドラマでは「MIU404」「極主夫道」「漂着者」などに出演。 池井戸潤原作では、連続ドラマW「シャイロックの子供たち」(WOWOW)に出演した。NHK連続テレビ小説「ブギウギ」に出演。

やまもと・こうじ ◆ 1976年東京生まれ。大河ドラマ「真田丸」「鎌倉殿の13人」、テレビドラマ「きのう何食べた?」「クロサギ」、映画『映画刀剣乱舞−継承−』、『シン・ウルトラマン』などに出演。近作にNetflix「離婚しようよ」、映画『キングダム 運命の炎』など。

なませ・かつひさ ◆ 1960年兵庫県生まれ。テレビドラマ「TRICK」シリーズ、「ごくせん」シリーズ、「あなたの番です」、映画『南極料理人』『マスカレード・ホテル』『水は海に向かって流れる』などに出演。池井戸潤原作ではテレビドラマ「花咲舞が黙ってない」に出演。最新出演映画『法廷遊戯』が11/10公開。

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