旅の原則は「宿には泊まらない」ことと「公共交通機関を使わない」こと
まず、旅の原則を決めよう。それは二つだけだ。
1、宿には泊まらない。
2、公共交通機関を使わない。
旅を長く持続するうえでの予算的なものもあるが、目的地がホテルや旅館になったり、移動手段によって行き先が左右されてしまったりするのは嫌だ。
自分の足を使って動き、たまたま行き着いた先で、「今日はここまで」と床に就くのが理想。
とすると旅の手段は、巷で流行っている車中泊一択になる。
車中泊をするなら、もっとも快適なのはキャンピングカーだ。
だがこれまでに何度も家族とレンタルキャンピングカーの旅をした経験から、日本国内の一人旅にキャンピングカーは向いていないという思いがある。
車重がかなりあるキャンピングカーは走行が安定しないうえ、燃費が極端に悪い。
入れない道や停められない駐車場も多々。
家族との短い旅行ならそれでもなんとかなるが、一人の長旅に適した車とは思えないのだ。
小回りの良さや燃費面から考えると、車中泊マニアの間で評価が高い、軽のハイトワゴンもいいのかもしれない。
車内の宿泊環境も、工夫次第でとても快適なものに仕上げられるらしい。
実際、地方の道の駅などでは、軽のハイトワゴンを使って長旅をしている人をよく見かける。
でも、自分があれをすると考えると、どうにも気分が乗らない。
車内から窓という窓に目隠しを貼り、駐車場の片隅で息を潜めるようにしている軽を見ると、なんとも不穏な気持ちになるのだ。
最近は増えたのでそう思わなくはなったが、最初に見かけたときはちょっとびっくりして「これ、通報しなくていいのか?」と思った。
それらに加え、車にかかってくる税金や駐車場代など世知辛い諸事情を総合的に勘案すると、結局、いま自分が乗っているスバルXVを使って旅に出るのがもっとも現実的であることに気づいた。
だがコンパクトSUVであるスバルXVは、決して車中泊に向いている車ではない。
後部シートの背もたれを倒して荷室を広げれば、大人一人寝られるスペースは確保できるが、広々とした空間にはならない。
前後左右の幅はなんとかなっても、天井が低いので頭がつかえるのだ。
できればもっと余裕のある空間を確保したい。
あれやこれやと思いを巡らせた僕が行き着いたのは、愛車の屋根にテントを設置するというアイデアだった。