発達障害と知的障害の違い
発達障害も知的障害も、社会生活を送る上で生きづらさを伴うことは、大きな共通点です。では、発達障害と知的障害は、何が違うのかと疑問に思う方もいるかもしれません(個人的にはそもそも比較することが果たして妥当なのかと考えますが)。
図1は縦軸に知能、横軸に発達障害としての特性をとったものです。かつてアメリカ精神医学会が発行した精神障害の診断と統計マニュアルのDSM‒IV‒TR(現在はDSM‒5が最新)でも多軸評定というものが採用されていました。そこではⅠ~V軸まであり、簡単にいえば精神科診断で使うのは主にⅠ軸とⅡ軸で、I軸はパーソナリティ障害と知的障害を除くすべての精神科の臨床疾患、Ⅱ軸がパーソナリティ障害と知的障害の2つでした。
つまり、発達障害はI軸に、知的障害はⅡ軸に分類され、それぞれ別々に診断されていたのです。そして、両者は併存することもあり、しないこともあります。最新のDSM‒5ではこの多軸システムは廃止されていますが、発達障害と知的障害の違いを知る上では参考になると思います。
この図1は多軸診断の考え方を利用して著者が作成したものですが、大きく4つに分類されると思います。①の正常域、②の知的障害のみ、③の発達障害のみ、④の知的障害を伴った発達障害の4つです。こう見ますと両者の違いを考えること自体、そもそもの軸(特性と知能という別の課題)が違うため、あまり意味がないことと感じます。
発達障害というのは、よく「発達凸凹」とも呼ばれますが、得意なものと苦手なものの差が大きいイメージです。いろいろな能力の中に、著しく高いものもあれば、低いものもある状態です。