梅ぼしの値上がりの背景に「開発輸入」
和の食材が軒並み値下がりしている中で、意外なことに値上がりの上位ランキングに、「梅干し」という品目があることに目が留まる。梅干しは、10年間で1・46倍にまで値段が上がっている。生鮮食品以外で見たときは、1位が焼き魚(76・3%)であり、次いで梅干しが2位だ。
なぜ、梅干しが値上がりしているのかという理由を調べると、開発輸入という構造が浮かび上がってくる。日本の商社や食品メーカーは、1990年代から円高環境を利用して、様々な食品(野菜、果実、水産物、冷凍食品、食肉加工品など)を海外で企画・製造して、日本国内に輸入してきた。
かつて、1990年代の円高期に価格競争に苦戦する国内事業者から「海外産の安値輸入品に押されて」という嘆きをよく聞いたものだ。この中には、海外メーカーの製品ではなく、国内メーカーが海外で企画した開発輸入品も多く含まれていた。
梅干しは、もともとは1960年代から1990年代までは台湾産が輸入されてきた。それが1990年代になって、当時、生産コストが格安だった中国へと生産拠点をシフトさせて、日本企業が開発輸入を活発に行った。中国では、甘みをつけて乾燥させた「梅干し」が昔からお菓子として普及していた。ご飯のお供として日本人が食べるのとは異なる消費スタイルだ。
それでも、日本企業は中国の「梅干し」業者を利用して、日本に逆輸入をしてきた。昨今は、梅干しのシェアの50%は輸入品だとされる。2012年以降の円安局面は、一転、こうした梅干しなどの開発輸入品の仕入価格を今度は割高にしたのである。
かつては、アジアで作って日本に逆輸入してくることが、安値を武器にシェアを広げる有効な戦略となったのに、皮肉なことに、2012年以降はこの戦略が逆回転してしまっている。現在、日本の消費者が、割高になっても輸入品を買わざるを得ない理由は、円高期に供給元が国内から海外に切り替わったことが大きい。
文/熊野英生 写真/shutterstock
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