僕自身より、僕の限界をよく知っている(サンカクヘッド)
——ここまでさまざまなお話を伺ってきましたが、編集者の大熊さんから見て、おふたりの共通点や違いはどんなところにあると感じていますか?
大熊 作風は全然違いますよね。でも、自分のなかで面白さの軸をきちんと持たれている点は共通していて。ある種の普遍性を掴んでいるんですよ。だから「懐かしさ」という個人的で曖昧な感覚をテーマにしても、誰にでも刺さる作品をつくれるのだろうと思います。編集者としては、一番楽をさせていただいているパターンですね。
サンカクヘッド 僕なんかからすると、大熊さんにはゴールが見えてるのかな? と感じることがあります。一緒に作品をつくっていても、どこを目指せばいいのか、この人にはハッキリ見えているのかなって。
大熊 見えてないですよ(笑)
サンカクヘッド だって大熊さんは「まだまだ行けますよ」みたいなことを言うじゃないですか。「まだまだ本領を発揮していないでしょ?」みたいな追い込み方をしてくるというか(笑)。だから、この人は、僕以上に僕の限界を冷静に見極めてくれているんだろうなと思っていました。
大熊 その答えは簡単で、サンカクさんには限界がないと思っているからです。だからいつも「まだまだ行けますよ」って言っている(笑)。
一緒に地獄に堕ちましょうよ、って(眉月じゅん)
眉月 私は大熊さんのことを、限りなく書き手に近い感覚をもった編集者だと思っていて。妥協したくないという書き手の気持ちに寄り添って、一緒に走ってくれる。それも危険地帯を(笑)。大熊さんって「一緒に地獄に墜ちましょうよ」みたいなことを言ってた時期がありましたよね。私は普通に、地獄には墜ちたくないなと思っていたんですけれど(笑)。そんなにひどい状況になる前になんとかしてくれよ、と。でも最近、ちょっと認識が変わってきたんです。
サンカクヘッド 一緒に堕ちる覚悟ができたんですか!?
眉月 いや、そうじゃないんですけど(笑)。大熊さんは地獄っていう言葉が好きなんだろうなって最近思ったんですよ。というか大熊さんって、地獄でしか見られないものを見ようとしているのかなって。そう思うと、地獄って必ずしも悪い場所じゃないような気もしてきませんか? もしかしたら大熊さんが地獄と呼んでいるだけで、私たち作家には天国のような場所かもしれない。最近は、そんな風にも感じたりしています。まあ、やっぱり地獄には堕ちたくないですけどね、私は。