マロリーのカメラの中には当時撮影されたフィルムが入ってて、それはもうエヴェレストで氷漬けになっているので、もしフィルムが発見されれば今でも十分現像出来るんですね。
マロリーとアーヴィンが、ヒラリーとテンジンが登頂する29年も前にエヴェレストの頂上に立っていれば必ず記念写真は撮ってるはずなので、そのカメラのフィルムを現像すれば誰が一番最初にエヴェレストに登頂したかが分かる。……という設定で書いていたので、もしフィルムが見つかっちゃったら僕がその答えを書かなきゃいけない。だから見つからなかったことにしたんです。
でも谷口さんは、ちゃんとカメラにフィルムが入っていて、暗室で現像してると写真が段々と鮮明になってくる、という演出(※6)に変えてそれをラストシーンとして描かれました。
マロリーが右手でピッケルを持ち上げて「おれは頂上に立ったんだぞ!」と言ってる姿を谷口さんが描いてくれたおかげで、僕がずっと「本当にあのラストでよかったのだろうか?」と、うじうじしていた想いを救ってくれたんですよ。
小説版と漫画版のラストが違っていて、しかも漫画のラストでマロリーが頂上に立ったということでね、僕の想うマロリーに対する申し訳がようやく立った。
「マロリー、お前、よかったな」というのをね、谷口さんがやってくださったんです。
本当にこのラストを描いていただいて谷口さんには心から感謝しています。素晴らしいラストだと思います。すごいすごい、最高の最高のシーンです。