元相方がM-1グランプリ優勝
2003年12月28日。「M-1グランプリ」決勝の夜、元芸人のカネシゲタカシはアルバイト先にいた。かつて「ドレス」というお笑いコンビを組んでいた相方が頂点に立つシーンを不思議な気持ちで眺めていた。
カネシゲは振り返る。
「1999年3月に、岩尾望と組んでいたコンビを解散しました。その後東京でアルバイトをしながら漫画を描いていたんですが、フットボールアワーのふたりが優勝するのをバイト先のパチンコ店のテレビで見て、焦りを感じました。『俺は何をしているんやろう』と」
元相方の岩尾は、同時期にやはりコンビを解散していた後藤輝基と「フットボールアワー」を結成。2002年に上方漫才コンテストで最優秀賞に輝いていた。
2001年に始まったM-1グランプリでは3回連続で決勝進出し、この年、見事に頂点に立った。岩尾は当時28歳になったばかりだった。
「NSCの同期なので、後藤のこともよく知っていました。ふたりがコンビを組むというのを人づてに聞いて『そうなんや』と思ったくらいでしたが、漫才をするというので驚きました。岩尾と僕はコントばかりやっていたので」
芸人を引退したカネシゲは、漫画家のアシスタントになるために上京していた。しかし、その漫画家の連載が終了したために、居場所を失ってしまった。
「アルバイトしながら、ひたすら4コマ漫画を描く生活をしていました」
テレビの中で祝福を受けるM-1王者が、カネシゲにはまぶしすぎた。