アイドルは厳しい世界だった

「20代の恋愛は先のことなど考えていなかった」「想像を絶する絶望や失望は何度もあった」人生のハンドルを自ら握って運転を始めた山下智久。独立から3年で身につけた“急がば回れ”の精神_6

──本作は山下さんにとって久しぶりの王道ラブストーリーです。20代のころは多くのラブストーリーに出演されていましたが、30代になって恋愛に対する心情に変化はありましたか?

現実的になったかもしれません。若いときは現実が見えていなくて、とにかくその瞬間を全力で楽しみたいという気持ちだったし、先のことなど考えて恋愛をしていなかったと思います。でも30代になった今は、5年後、10年後を考えながら先を見据えるようになったし、相手を思いやる変化が生まれていると感じています。

──今回は、突然視力を失い絶望する役柄を演じていますが、山下さん自身、真治のような絶望に直面した経験は?
 

想像を絶するような絶望感や失望は何度もありましたし、乗り越えてきました。過ぎ去ったこと、起こってしまったことをなかったことにはできないし、変えることは難しい。だから僕は「未来を変えていかなくては」という気持ちで進んできました。そうやって歩みを進めていった結果、5年後、10年後が輝かしいものであれば、必然的に過去も見え方が変わってくると思うんです。

自分の前向きな気持ち、未来を変える気持ちさえ失わなければいいんだと。いまはそういうマインドで仕事に臨んでいます。

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──「想像を絶する」という表現をされるほど、過酷なものだったのですね。

やはりアイドルは厳しい世界でしたから。何十人、何百人の男性たちが集まっている中で勝ち残っていくのは、才能だけではダメ。メンタルの強さも必要なんです。

だからといって、他人を蹴落としてまで生き残ろうとは思わなかったし、そういう気持ちで突き進んでも絶対に成功はできなかったと思います。やはり「勝ち残っていきたい」という真っ直ぐな情熱がいちばん大切だったと思います。

──ちなみに、絶望や失望から立ち直ることができたきっかけは?

守らなくてはいけないもの……僕にとっては家族ですが、その存在があったからこそ、立ち直れたと思います。

何事もそうだと思いますが、自分に負荷をかけないと突き進む力にならないのかもしれません。家族を守ることはメンタルに負荷をかけることになりましたし、ダンスなどの練習やハードスケジュールなど、当時は物理的な負荷もありました。

でもそれを乗り越えたからこそ、今も仕事をさせてもらえる状況にあるのかなと思います。そういった経験に僕は感謝しています。

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──先ほど、独立後のキャリアについて「自分で運転したかった」と語っていました。山下さんが目指す目的地は?

今はとにかく新しい景色が見たいという思いだけなんです。「とりあえず今回は西に進んでみようか」というような身軽さです。

俳優業がメインになっていますけど、そこにこだわりがあるわけでもありません。新しい人に出会って、新しい価値観でおもしろいものを作っていきたい、そこに自分の身を置いていたいという感じです。

とはいえ、ツーベースヒットではなく、みなさんを驚かせるような場外ホームランを狙う気持ちは常に持っていて。その気持ちをずっと持ち続けていれば、いつかはかっ飛ばせるんじゃないかと思っています(笑)。


取材・文/斎藤 香 撮影/千葉タイチ スタイリスト/百瀬豪 ヘアメイク/北一騎(Permanent)

『SEE HEAR LOVE 見えなくても聞こえなくても愛している』(2023)上映時間:2時間12分/日本

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漫画家の泉本真治(山下智久)は、自分の作品が映画化されることになり大喜びするものの、長年無理して作業をしてきたため体が悲鳴を上げて倒れてしまう。医師から診断された病名は「急性緑内障発作」。次第に視力を失っていき、漫画を描くことどころか生活もままならなくなる真治。自暴自棄になり身を投げようとした彼を救ったのは、真治の漫画の大ファンで、耳の聞こえない相田響(新木優子)だった。毎日のように自分の世話をする響に真治は次第に心を開いていく。

ディレクターズカット版  7月7日(金)より劇場公開
PrimeVideoにて独占配信中
公式サイト:https://see-hear-love.com
©2023「SHL」partners

山下智久 やました・ともひさ
1985年4月9日生まれ。千葉県出身。1996年から芸能活動を開始。数々のドラマに出演し、幅広く活動してきた。主な作品に『ドラゴン桜』(2005/TBS)『野ブタ。をプロデュース』(2005/2020/日本テレビ)『プロポーズ大作戦』(2007、2008/フジテレビ)『クロサギ』(2006/TBS)『コード・ブルー-ドクターヘリ緊急救命-』(2008、2009、2010、2017/フジテレビ)など多数のドラマで活躍。近作では『正直不動産』(2022/NHK)。『TOKYO VICE』(2022/HBO Max、WOWOW)。配信ドラマでは『THE HEAD』(2020/Hulu)『今際のアリスシーズン2』(2022/Netflix)映画では『映画クロサギ』(2008)『あしたのジョー』(2011)『サイバー・ミッション』(2019)『マン・フロム・トロント』(2022/Netflix配信)。最新作は『神の雫/Drop of God』(Hulu)が2023年9月から配信開始。歌手活動の最新作は『SHE HEAR LOVE 見えなくても聞こえなくても愛している』の主題歌「I See You」。2023年6月9日よりAmazonMusicで配信開始。High Hope Entertainment 所属