理解者マドン監督

さて、今度は大谷さんのボスたちに焦点を当てて見てみましょう。過去5年間で経験した監督は4人。1年目の2018年はマイク・ソーシア監督、2年目はブラッド・オースマス監督、3年目から5年目の途中までジョー・マドン監督、そして、5年目の途中から、フィル・ネビン監督がチームを指揮しています。

監督によって、大谷さんの起用法もさまざまでした。簡単に振り返ると、ソーシア監督の時代は登板前後の1日は準備や体の回復に専念するため休みでした。登板は基本的に中6日で日曜日が中心。「サンデー・ショウヘイ」という言葉も誕生しました。

リハビリ中だった2年目はさておき、4年目の2021年、マドン監督が大谷さんに対する制限を撤廃。登板日にも打者で出場するリアル二刀流を解禁し、休養に充てられていた登板前後も打者で出場する、二刀流フル稼働でシーズンを戦いました。

ただ、実は1年目から大谷さんはフル回転できることを首脳陣にさりげなくアピールしていたそうです。当時のソーシア監督は「登板した翌日、彼はバットを持って、私の前に立って、『たぶん、僕は打てると思うよ』、なんてジョークのような感じで言っていたかな」。チーム方針で欠場とされながらも、大谷さんは打者出場の意欲は示していました。

二刀流”完全解放”を英断…エ軍マドン前監督「唯一無二の才能に制限をかけてはならぬ」大谷翔平が贈った「感謝と自責の言葉」_3

類い希な唯一無二の才能の持ち主に制限をかけてはいけない

その意欲が叶ったのが4年目、マドン監督が制限から”解放”したことで、二刀流は開花しました。類い希な唯一無二の才能の持ち主に制限をかけてはいけない。これが最優秀監督に3度選ばれている名将の考え方でした。もちろん、大谷さんが手術や故障を乗り越えて、フル稼働の二刀流に耐えられる体作り、メンテナンスを確立させたことが1番の要因です。

それぞれの監督へ、その時々で思うことはあるでしょう。ただ、2022年の6月上旬にチーム低迷によりマドン監督が解任された際には、自責の念と感謝の言葉を述べました。

「全てが監督のせいという訳ではもちろんないですし、むしろ自分自身の調子がこう上がらない。申し訳ないというのはもちろんあるので。お世話になりましたし、本当に感謝の気持ちはあります。どの監督もお世話になった監督はみんな一生懸命やっていましたし、選手自身もそういう監督についていきたいなと思ったんじゃないかなと」

共通して言えることは、過去の監督たちが大谷さんに全幅の信頼を寄せていたことです。前述したように2023年シーズンはフィル・ネビン監督が大谷さんを基本的に中5日で回す意向を示しています。これもエースへの信頼の表れと言えるでしょう。

監督からの期待に応えるのが選手。二刀流でフル稼働している大谷さんの気持ちが通じ、チームがポストシーズンに進出する。これこそが、今までの監督を含めて、信頼を寄せてくれた指揮官たちへの恩返しとなるでしょう。