エンゼルスに放出されると活躍する謎

ライセル・イグレシアスのように、エンゼルスに所属した選手が他球団へ移籍した途端に花開き、活躍するケースは、実は珍しくありません。

例えば前述のホセ・イグレシアスは2021年シーズン、エンゼルスでは打率2割5分6厘でしたが、9月にレッドソックス移籍後、なんと3割5分6厘の高打率を残しました。同じく前述したロン毛・ロン髭のブランドン・マーシュはフィリーズに移籍してワールドシリーズで活躍しましたが、エンゼルスにいてはワールドシリーズ進出など望むべくもなかったでしょう。

2021年5月にエンゼルスを去った大ベテラン、アルバート・プホルスも、他球団に移籍して成績がアップした1人です。同年、エンゼルスでは24試合の出場で1割9分8厘、ホームラン5本でしたが、移籍したドジャースでの85試合は、打率2割5分4厘、ホームラン12本をマークし、貴重な右の代打として活躍しました。

古巣のセントルイス・カージナルスに戻った2022年シーズンは打率2割7分、ホームラン24本と大活躍。MLB史上4人目の大台となるホームラン通算700号の偉業を成し遂げ、最終的に703本で現役引退。最後の花道を古巣で飾りました。

2021年に先発投手として期待されていた左腕ホセ・キンタナも、なぜかエンゼルスでは不振でした。同年エンゼルスでは0勝3敗、防御率6.75と打ち込まれました。ところが、翌年はパイレーツとカージナルスの2球団で投げて合計32試合に先発登板し、6勝7敗と負けが先行したものの防御率2.93と安定した内容でした。

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選手が本来の力さえ出せば、「なおエ」脱却の日は案外近い

元同僚でワールドシリーズ制覇を経験した選手も数人います。大谷さんの元女房役マーティン・マルドナドは、2019年シーズンからアストロズに在籍し、正捕手として2022年の世界一に貢献しました。

他にも、ダニエル・ハドソンがナショナルズ時代の2019年に守護神としてワールドシリーズ制覇に貢献。胴上げ投手にもなったベテラン右腕は、同年のシーズン前にエンゼルスの春季キャンプに招待選手として参加していましたが、メジャー契約はならず、ブルージェイズに移籍。その後、ナショナルズにトレードされ、花開きました。

2019年シーズンに所属していた選手では中継ぎのルイス・ガルシアも他球団で活躍しました。2022年にパドレスの貴重なリリーフとして、64試合に登板。4勝6敗ながら、防御率3.39でチームのポストシーズン進出に貢献しました。

エンゼルスから放出された選手が新天地で大活躍するのは素晴らしいことで、素直に祝福したいところなのですが、同時に、なぜエンゼルスでは活躍できなかったのか、と複雑な気持ちも芽生えます。エンゼルスから放出された選手がなぜ活躍するのか、その答えは正直なところ、分かりません。

しかし、たまたまエンゼルスで活躍できなかっただけで、放出された選手はもともと能力のある選手だったことは明らかです。つまり、エンゼルスにいる選手は能力の高い選手が多く、選手が本来の力さえ出せば、「なおエ」脱却の日は案外近いのではないでしょうか。