地方銀行では、あちこちで取り付け騒ぎ倒産が相次いでいる

中国の地方銀行では、あちこちで取り付け騒ぎがおこり、倒産が相次いでいる。
日本のメディアが大きく伝えないので、現地の深刻な状況が分からないかも知れない。この銀行経営危機という中国経済の病理は末期がんである。静かに進行し、やがて死の床につく。

直近でもクレディスイスのAT1(永久劣後債)の紙くず化が間接的な引き金となって、中国の中小の4つの銀行の債権利回りが急上昇した。

湖北省の農村商業銀行と荊門農村商業銀行、山東省の煙台農村商業銀、遼寧省の営口銀行で、23年3月末の償還を見送ったのだ。中国全体の劣後債償還額は400億元(8000億円)。23年上半期に償還のピークがくる。

内モンゴル自治区フフホトといえばレアアース景気に沸騰しているところだが、一方で、地元の「包商銀行」は3年前に倒産した。

これを皮切りに、河南省、安徽省、遼寧省などの村鎮銀行(田舎の信用組合のような小規模な金融機関)が口座を凍結したりした。包商銀行はインサイダー取引の黒幕だった肖建華が、監督の届きにくい地方銀行にテコ入れして、株式取引や大がかりな投機行為の財布替わりに活用していた。肖が香港のホテルから拉致されて行方不明となり、不正融資の実態が露呈した。

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抗議集会に介入し、参加者を暴力的に排除

2022年7月には杭州市、南京市などで預金者が人民銀行支店を取り囲んで抗議した。とくに河南省では人民銀行支店前に3000人が座り込んだ。地元銀行の40万人の口座がいきなり凍結されたからで、ほとんどが小口預金の農民だった。全土に同じ動きが見られ、公安系の屈強な男たちが抗議集会に介入し、参加者を暴力的に排除した。

遼寧省の遼寧農村商業銀行は22年8月に倒産した。原因は同行トップが賄賂をとって不正融資を拡大していたからだった。同行は瀋陽農商銀行が事業を引き継いだ。遼寧太子河村村鎮銀行も倒産した。

政府はこうした不良債権処理に邦貨換算で、1人当たり1000万円までの保証をしているが、2018年から22年末までに注ぎ込んだ不良債権処理の総額は627行、52兆円(2.6兆元)にもおよぶ。さらに銀行監査監督委員会、財務省ならびに人民銀行は289行に2兆7000億円弱(1335億元)を注入した。砂漠にジョウロで水をやっても何ほどの効果も期待できないが、信用不安をとりのぞこうと当局も必死なのだ。