『ガール・ピクチャー』
監督/アッリ・ハーパサロ 出演/アーム・ミロノフ、エレオノーラ・カウハネン、リンネア・レイノ
4月7日より新宿シネマカリテほか全国順次公開
© 2022 Citizen Jane Productions, all rights reserved
18歳になる前の3人の少女たち。バイト仲間のミンミとロンコ。そして彼女たちのバイト先を訪れ出会ったエマ。悩める女の子たちの、ままならない日々を3度の金曜日に限定して描く。女性監督が二人の女性脚本家と製作したフィンランド映画。サンダンス映画祭でワールドシネマドラマ部門観客賞に輝いた佳作。原題は女の子を叱る慣用句「ガール・ガール・ガール!」。
普遍的なガールズ・ムービーの復活
あえて刺激抑えめな現代性を感じる
昔はこのようなガールズ・ムービーがありましたが、いまはなくなってしまった。もしいまアメリカのドラマがZ世代を描くなら、もっとエグい世界観になる。日本はいわゆる部活映画ばかりで少女映画はほぼ見当たりません。フィンランドから届いたこの作品を観て、世界中の映画ファンは「自国では作られなくなったな…」とため息をつくでしょう。
ルックスはパンキッシュで反抗的な少女、フィギュアスケートに青春を捧げることに疲れた女の子、ヴァージンだけど自分の性がまだよくわからない娘。非常に自然なクィア(性的マイノリティ)と潜在意識のクィアを均等に描く。一見、新しい性意識を扱った映画に映りますが、とても普遍的なガールズ・ムービー。
北欧の闇や格差、少女たちの愛情飢餓や精神的トラブルは描かない。揺れ動く青春の苦しさを、ちょうどいいリアルから浮き彫りにする。
Z世代がヤバいとも感じない。社会的な歪みやSNSの複雑な人間関係もない。北欧デザインが適度におしゃれで、3人ともきれいでかわいい。
大人から見たらばかげていると思うことも、10代の女の子たちにとっては真剣。この優しい視点は「新・古典」と言っていい。いまどき珍しいほど、牧歌的でもある。
ただ、よくできていますが、1時間40分は少し長い。エンタメなのか、文芸ものなのか、ハッキリしないもどかしさがあります。
興味深いのは、男の子たちの描き方。ハンサムな少年ばかりが登場しますが、みんな、どこか童貞っぽくて、優しくて、リベラルで、あまり性欲を感じさせず、淡白。監督が女性だからでしょうか。女の子が王子様に幸せにしてもらおうと思っていない点は、とても大人。また年長者の知恵が子どもの未熟さを救うこともない。
それゆえカタルシスも乏しいのですが、女性観客は感情移入するのかも。はっちゃけてるわけでもなく、適度に思慮深い3人の少女の姿には、むせかえるような懐かしさがある。現代の少女ではなく、かつて少女だった女性たちに伝わるものは大きい気がします。
近年のエンタメはあまりに刺激が多すぎる。刺激を減らそうという動きはいくつかの秀作にも感じます。今後「女性的な」映画の新潮流が生まれる可能性はありますね。(談)
Text:Toji Aida