もしも大事件の容疑者になったら、
もしもノーベル賞候補になったら……
今後もし、やむにやまれず、世間を震撼させるような大犯罪の実行を決意したとしよう。
準備段階で僕はまず、SNSのアカウントや履歴を完全に消去しようと努めるはずだ。
今後の立件や裁きで不利になる情報をほじくり出されかねないし、何より家族や友人など自分と密接なつながりがある人に、迷惑が及ばぬようにしたいからだ。
逮捕された僕のプロフィールを、マスメディアはこぞって探りにかかるが、ネット上には情報がほとんど存在しないと見るや、僕が生まれ育った土地で聞き込みを開始し、かつての同級生を探り当てるだろう。
小学校や中学校、あるいは高校の卒業アルバムを借り受け、僕が写っている部分を複写。
こうして、若かりし頃の僕の姿がワイドショーやネット記事で曝け出され、キャスターやコメンテーター、記者やネット民に、ああでもないこうでもないといじくりまわされるのだ。
逆に、僕がもし仮にノーベル賞などの大きな栄誉を受けることになったとしても、誰でもアクセスできるネット上の情報は価値が低いので、メディアはやはり僕が写っている卒アルを入手するべく奔走するに違いない。
そんなふうに考えてたら、なんだか心配になってきた。
僕の卒業アルバム、大丈夫かな?
メディアに晒されたとき、あまりにみっともなかったら困る。
は、恥ずかしいではないか……。
そうなる前に、ちゃんとチェックしておかねば。
僕が大犯罪人になったりノーベル賞を受賞したりする可能性は、かなり低いのでいらぬ心配ではあるのだが。
そしてここまで読んだ方はすでにお気づきのように、これはネタに困ったコラムニストが、もっとも手っ取り早い自分の話でお茶を濁そうと思いついた戯言に過ぎないのだけど、ま、お付き合いください(もちろん、忙しければ無理に付き合う必要はありません)。