南園さんは依頼時、像のデザインなどについては彫刻家の天野さんに一任し、一切、注文はつけなかったというが、なかなか破天荒な仕上がりだ。このデザインの意図について、同社の広報担当者が以下のように説明してくれた。

「ゴキブリは人類の誕生(約500万年前)よりもはるか昔、約3億円前から地球上で生活しており、その力強い生命力を、どっしりとした体、太い脚や腕のフォルムで現しています。また、ゴキブリのお腹の中には人間が生活する都市や建物が描かれています。

現在は後から地球にやってきた人類がわがもの顔でゴキブリを殺していますが、もともと先に住んでいたのはゴキブリで、それを忘れてはいけないということを逆説的に表現しているわけです」

奈良県の林泉寺にある「護鬼佛理天」像の前には、彫刻家・天野さんの制作意図が石碑になっているが、そこにも「ゴキブリの腹上に寄生する都市という逆転の構図を彫刻することで、我々の薄情さをうめあわせたいと思う」と記されている。

SNSで「ラスボスすぎる」と話題のゴキブリ像。制作意図を聞いたら泣けてきた……_4
ゴキブリ像の前設置された石碑には、彫刻家・天野氏の言葉が記されている

再び南園さんが言う。

「わが社は、商売とはいえゴキブリを殺して収益を上げていますので、人間との共生が叶わぬゴキブリの鎮魂、供養になればなによりと思っています。ぜひ本物を見に、お寺にお参りにいってほしいですね」

林泉寺では毎年11月に『護鬼佛理天祭』なるゴキブリ祭りも行われているのだとか。ぜひ、現地でその雄姿を確かめてほしい。