「ChatGPT」の登場でGoogleが窮地に立たされているわけ

昨今のIT業界は対話型AIの話題で持ちきりという印象だが、Googleやマイクロソフトといった大手IT企業は、こうした技術とどう向き合ってきたのか。

「機械学習に世界的な注目が集まった2011年頃から、IT業界のフロントランナーとしての誇りを持っていたGoogleは、この分野への研究を活発に行うようになり、2018年10月に『BERT』という対話型AIを発表しました。このBERTは自然言語処理という技術を導入しており、当時世界随一と言っても過言ではないほどの“自然な文章”を作り出すことができました。

このBERT開発の裏には、GoogleがAIシステムの開発でも競合他社を大きく引き離したかったという理由があります。というのも、当時はAmazonの対話型AI搭載スマートスピーカー『Alexa』が非常に売れており、Googleはこうした製品の根幹になる自社製の対話型AIを開発し、市場で覇権を握りたかったのです」

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しかし、Googleはこうした開発競争で、今かなり遅れを取ってしまっているという。

「BERTは衝撃的な存在でしたが、以降GoogleのAI開発は伸び悩んでしまいます。ですが、この間にも先にご説明したOpen AIは熱心に研究を続けており、2022年11月になって突如、BERTを凌駕するAIであるChatGPTを発表したというわけです。

しかも、直後にそれまでGoogleの下に甘んじていたマイクロソフトはOpen AIに2019年から出資しており、ChatGPTの発表後にも追加の出資を行い、この技術を自社の検索エンジンである『Microsoft Bing』に組み込み、対話型チャット形式の新しい検索機能を追加したのです。ChatGPTの弱点だった情報の出典元がわからないという点も改善され、非常に実用的なシステムとして注目を集めました。さらにOpen AIは今年3月14日に、最新版AIの『GPT-4』を発表したので、マイクロソフトはより一層勢いづいています」

Googleが焦る理由は、単に技術開発で遅れをとったからだけではないと神崎氏は続ける。

「スマートスピーカーがブームになった際、世界中のアナリストが『3、4年後には現在の“検索エンジンを使って調べ物をする”という行為は50%ほど減るだろう』と予測していました。これは、対話型AI技術が発展すると、調べたいことは音声AIに聞くだけで答えをもらえる時代が来るという予想からですが、そんな時代が来ると、PCやスマホの検索エンジン大手として莫大な広告収入を得ているGoogleは危機に陥ってしまう。Googleはそうした時代に変わってもなお今の地位を失墜しないため、自社製の対話型AIで高いシェアを構築したかったはずなのです」

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