症状が出るまで時間がかかる
肝臓に脂肪が溜まること。一見するとこれは地震などの災害に備えて非常食や飲み物を備えておくようなもので、よい側面だけ見れば人間の体のなかでも不測の事態に備えたまっとうな機能に思える。
しかし災害時の非常食と違って、脂肪肝には大きなデメリットが存在する。それは放置しておくとボヤのような“炎症”が引き起こされることだ。この炎症を医学用語で“脂肪肝炎”と呼ぶ。
残念ながら、炎症が起きても特に知覚できる症状は起きない。そして炎症が肝臓の上で何度も引き起こされると、先述したマルチタスクをこなす有能な肝臓の細胞が死滅し、最終的に何度もかきむしったあとに硬化した皮膚のような状態になり、肝細胞としての機能を失う。
これを肝臓の「線維化」と呼ぶ。
ここまできてもまだ知覚できる症状は起きず、このまま肝硬変や肝臓がんの状態に移行し、おなかに水が溜まったり、または吐血をしたりしてはじめて異変を感じるものなのだ。
おなかの超音波の検査で指摘された脂肪肝、酒の飲み過ぎとして一笑してきた肝臓の数値の上昇。軽く考えがちだが、これらは言葉の響き以上に重みを持って受け取ったほうがよいだろう。
予防法
・自分の体重の10% の減量により、ほぼすべての脂肪肝が改善し線維化が改善したという論文(ManuelRomero-Gómez ,et al.Treatment of NAFLD with diet, physical activity and exercise.J Hepatol. 2017 Oct;67(4):829-846.)がある。「10%ダイエット」を目指そう。
・BMI が25以上の人、肝臓の酵素(AST、ALT)が基準値を超えている人は脂肪肝の疑いあり。お腹の超音波検査で確認しておこう。
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