「脂肪味」という新しい味覚があなたを中毒にする
ここで脂質中毒になる原因のひとつになっている人間の「味覚」について、少し解説しましょう。
味覚には、5つの基本味があります。「甘味」「塩味」「酸味」「苦味」「うま味」、これらをまとめて味覚の五基本味といいます。
それぞれの味を感じることには、ちゃんと意味があります。
例えば、甘味は糖分の味、つまりエネルギー源の味です。食材の甘みは、人間に必要なエネルギー源が含まれていることを示しています。
塩味とは、ミネラルの味です。私たちがものごとを考えるとき、脳の神経細胞が働きます。この神経細胞を正しく働かせるために、ミネラルのひとつであるナトリウムが必要なのです。
このように、味覚は食物中に人体の恒常性維持のために必要な成分が含まれていることを教えてくれる、とても大切な感覚なのです。
そして、最近の研究で、この五基本味に加えて第6の味覚があることが明らかになってきました。「脂肪味」です。
ただし、この「脂肪味」は、五基本味とは性質が少し違う味覚です。脂肪を味わうだけではなく、しっとりとした食感を含め、脂肪を感じとる感覚もあるのです。
「脂肪味」に敏感な人は、少しの量の脂肪でも感じとることができます。だから、脂肪をたくさん摂取する必要がありません。
反対に、「脂肪味」に鈍感な人は脂肪を摂りすぎてしまいます。しかも、高脂肪の食品を食べ続けることで、ますます「脂肪味」に対して鈍感になっていき、食べすぎを抑えられなくなります。
また、脳内には、おいしいものを食べると刺激されて快感を得る「報酬系」という部位があります。脂肪を摂り続けていると同じ刺激では快感を得ることができなくなり、脳は「もっと脂肪を!」と強く求めるようになります。
これは人が麻薬中毒になるシステムと同じなので、私は「脂質中毒」と名づけました。