過剰な依存精神が事件を引き起こす
こうした男性たちは、女性への愛情がほぼないので、その子供への愛情も抱きにくい。だから、子供を邪魔な存在だと考え、気に入らないことがあれば、簡単に手を出したり、女性にもそれを求めたりする。
また、最初は男女が睦まじい関係であっても、だんだんと仲が悪くなることもある。こうした中では、男性が女性を憎むうちに、その子供にも同じように憎しみを抱いて、暴力をふるうことがある。子供を憎い女性の分身のように捉えてしまうのだろう。
先の児相相談所の職員はつづける。
「両親の仲がいい状態にあるからこそ起こる虐待もあります。たとえば、男性の方が過剰に女性に依存しているケースですね。こういう男性は、女性が子供の世話をしていることに嫉妬しがちです。どうして俺より子供を大事にするんだと逆恨みする。それが子供への暴力を引き超すのです」
これもしばしば取材現場で遭遇するケースだ。
男性が子持ちの女性に愛情を抱いて一緒になったとする。それまで外で二人で会っていた時は、女性は男性に尽くしていたが、家庭では母親となるため、どうしても子供の方に時間もお金もかけようとする。
未熟な男性は、こうしたことが許せない。なぜ自分が軽んじられるのだと憤慨し、子供を逆恨みするようになる。それで直接手を上げたり、無理やり女性を子供から引き離そうとしたりする。
また、その逆の例もある。私が『近親殺人―そばにいたから―』(新潮社)で取材した事件では、女性が夫への想いを膨らますあまり、小さな子供をマンションの窓から投げ落として殺害した事件があった。ひとつひとつの事件をみれば、男性ばかりでなく、女性が加害者になるケースもあるのだろう。