依存症とネグレクト

【依存症のヤングケアラー】
ある女性は、覚醒剤中毒のシングルマザーのもとで育った。下に妹と弟(全員父親が違う)がいたが、母親は風俗店やねずみ講で稼いだお金をすべて覚醒剤につかい、家のことは何もできない状態だった。

女性は、年下の妹弟を食べさせるために、毎日のように親戚や友達の家を回って食事をもらったり、家の片づけをしたりしなければならなかった。また、母親が覚醒剤の後遺症でおかしくなっている時は、そのケアをした。

その生活は15歳までつづいた。

【ネグレクトのヤングケアラー】
ある男性はネグレクトを受けていた。シングルマザーの母親は家庭より自分の楽しみを優先する人間で、小学生だった子供を家に放っておいて、水商売をしながら男の家を泊まり歩いていた。

母親が家に帰ってくるのは週に1度あるかどうか。しかも、滞在時間は1時間ほどで、洗濯物を置いて数千円の「生活費」を置くとすぐに去っていった。

家には障害のある弟がいたため、男性は学校へ行かず、そのお金で何から何まで自分でやらなければならなかった。ただ金額が少なかったため、電気や水道が止まることはしょっちゅうで、給食を盗むために学校へ行っていたという。

この2つの事例をどう思うだろうか。最初の女性は中学の途中で家から逃げるように夜の街をさまよっているうちに、売春をするようになった。やがて彼女は寂しさから母親同様に覚醒剤に手を出して逮捕されている。

2番目の男性は、高校を1年で中退後、バイクの窃盗と転売で逮捕されて少年院へ送られた。障害のある弟は、男性がグレはじめてから施設へ移されたそうだ。

この2人が口をそろえて私に語ったことがある。

《藤沢2歳児・傷害致死事件から考える》「小学生くらいまで当たり前だと思っていたけど、中学生くらいでうちの異常さに気づいて、嫌で嫌でたまらなかった」見落とされがちなヤングケアラーの2つの盲点「依存症」と「ネグレクト」_3
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「小学生くらいまでは家庭環境が当たり前だと思って受け入れていたけど、中学に上がってからうちが異常なんだって気づいて嫌で嫌でたまらなかった。とにかく逃げ出したいという気持ちだった」