ヤングケアラーの知られざる一面
ここ数年、マスメディアは「ヤングケアラー」の問題を取り上げることが増えた。
ヤングケアラーとは、家族のケアをしている子供を示す言葉だ。現在その数は10万人をはるかに超えると推測されており、厚生労働省によれば小学6年生の15人に1人、大学3年生の16人に1人がヤングケアラーだとされている。
現在マスメディアが主に報じるヤングケアラーは、親やきょうだいに病気や障害がある子供たちだ。彼らはその世話や家事に追われ、勉強や遊びの時間を奪われたり、学校に行けなくなったりすることがある。そうしたことが、ヤングケアラーの問題だとされ、改善が求められているのだ。
これはこれで事実であり、社会が一丸となって改善に向けた取り組みを行っていくべきだろう。ただし、私は近著『君はなぜ、苦しいのか 人生を切り拓く、本当の社会学』(中央公論社)で書いたように、虐待をはじめとした多くの社会事件の現場を取材する中で出会うヤングケアラーは、これとは少し違う現実を抱えている人たちが多い。下図を見ていただきたい。
先述のマスメディアが報じるヤングケアラーは、「病気」「高齢による衰弱」「身体障害」「認知症」「発達障害」「知的障害」と区分されるものだ。他方、それとは別に、「依存症」「精神障害」「その他」が合計で27.5%ある。実はここにヤングケアラーのあまり報じられない一側面があるのだ。
その一側面とは何か。「依存症」が覚醒剤依存であったり、「精神障害」が違法薬物の後遺症であったり、「その他」がネグレクトだったりするのだ。私が出会った中から2人のケースを紹介する。