『るきさん』 (高野文子/筑摩書房)

<わたなべぽん 選>
“シンプルに豊かに生きるって素敵だと教えてくれる”

実は大掃除のベストシーズン? 汚部屋を脱した作家たちが選ぶ、GWに「片付けがしたくなる本」5冊_5
雑誌連載の全57話が単行本、文庫化された

『ダメな自分を認めたら、部屋がキレイになりました』(KADOKAWA)は、一念発起し汚い部屋を脱出した実体験をつづったコミックエッセイ。その著者のわたなべぽんさんが、強く勧めるのが、漫画『るきさん』(高野文子/筑摩書房)。この作品は1988〜1992年に雑誌『Hanako』で連載されていた。バブル期でありながら、モノやお金にとらわれず、素朴な日常を送る独身女性のるきさんをユーモラスに描いている。

「『るきさん』を知ったのは、今から約20年前。当時、私は古本屋の店長をしていたんです。中古本やアダルトビデオなど、職場はとにかくモノだらけ。家に帰ったら帰ったでまた散らかっていて。そんな暮らしの中で手に取ったこの作品はまったくの別世界でした。

主人公のるきさんは、医療保険の請求書を処理する仕事を在宅でやっているんですが、ひと月分の仕事を1週間で終わらせ、あとは気ままに暮らしています。作中で描かれる、るきさんの部屋には布団と黒電話くらいで、余計なモノが一切ない。

一方で、親友のえつこさんは今でいう意識高い系。この対照的な二人がそれぞれ自分らしくありながら友人関係を築いていて、人間関係もすっきり。私もこんなふうに暮らしたい!と何度も読み返し、友人に贈ったりもしています。

物質的にも精神的にも身軽でいること、それによって自分にとって何が大切かがはっきりとわかること、などシンプルに豊かに生きるって素敵だと教えてくれる漫画ですね」

ちなみに、わたなべぽんさんにとって毎年5月は掃除月間だそう。

「年末の大掃除は水が冷たく、洗ったものも乾きにくいので、暖かい5月の頃に取り組むのがおすすめです。月の初めの連休に掃除や片付けを始めて、そのままひと月かけて少しずつ進めていきます。すると、1年のあと半分、きれいに整った状態で頑張ろうと思えるんです」

一年の計はゴールデンウィークにあり? ここで紹介された本を読みながら、まずは目の前のちょっとした整理整頓から始めてみてはいかが。

取材・文/小林 悟