『ゴモラ』(2008)Gomorra
上映時間:2時間15分/イタリア
監督:マッテオ・ガッローネ
出演:トニ・セルヴィッロ
1968年生まれのマテオ・ガッローネと1970年生まれのパオロ・ソレンティーノは2000年前後にデビューして国際映画祭での受賞を続けた、今世紀のイタリア映画の星である。ガッローネはマイナーの人々を詩的な感性で描くことが得意だったが、この作品ではイタリアの闇に挑み、カンヌ国際映画祭で審査員グランプリを得た。
原作はロベルト・サヴィアーノのノンフィクション『死都ゴモラ』で、作家はナポリのギャング組織「カモッラ」の実態を描いたことで脅迫を受けて警察の管理下で暮らしている。映画は原作から5つのエピソードを選び、カモッラに操られて犯罪を繰り返してゆく人々を手持ちカメラで描く。これほど暗澹たる気持ちにさせられる映画は珍しい。
『ローマ環状線、めぐりゆく人生たち』(2013)Sacro GRAS
上映時間:1時間35分/イタリア=フランス
監督:ジャンフランコ・ロージ
1964年生まれのジャンフランコ・ロージは80年代からドキュメンタリーを撮っていたが、この作品はヴェネツィア国際映画祭でドキュメンタリーとして初めて金獅子賞を得て、燦然と国際舞台に登場した。
原題は「聖なるGRA」でGRAとはローマの「環状高速道路」を意味する。そこは市内と郊外の境界線で、モダンなアパートが立っている地区だ。映画はそこに生活する救急隊員、植物学者、年老いた俳優、夢を追う若者などさまざまな人々の日常を克明に見せて、現代イタリアの抱えるさまざまな問題を浮き彫りにした。撮影に2年間かけたという映像が、見ているうちに心に沁みてくる。
『イル・ディーヴォ 魔王と呼ばれた男』(2008)Il divo
上映時間:1時間50分/イタリア=フランス
監督:パオロ・ソレンティーノ
出演:トニ・セルヴィッロ
ソレンティーノ監督は、華麗な映像を駆使して現代イタリアの諸相をどこか現実離れした神話のように構築する。この映画では、首相を7回も務めて戦後イタリア保守政治の権力そのものだったジュリオ・アンドレオッチの闇に包まれた生涯を見せてくれた。
マフィアを始めとする怪しい人々と公然と付き合いながらも、常に政治の中心にいる、ふてぶてしい存在を怪優トニ・セルヴィッロが体現し、その磁力によって周りのすべてが引っ張られていくさまを流れるような映像で見せ切る。
21世紀のLGBTQを自然に見せるティモシー・シャラメの出世作、カンヌのグランプリ作品、ドキュメンタリー初の快挙……21世紀の傑作イタリア映画10選
2月17日に刊行された新書『永遠の映画大国 イタリア名画120年史』。イタリア映画祭を立ち上げた、著者の古賀太によるイタリア映画の歴史に残る傑作10選を紹介する。
『永遠の映画大国 イタリア名画120年史』より
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ティモシー・シャラメの出世作
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