サウナは脳疲労が蓄積、水風呂との往復でヒートショックも
――では、近場のサウナで「ととのえよう」とするのも、同じメカニズムで疲れるということでしょうか。
梶本医師:そうです。サウナは高温なので数分間で体温を上昇させますが、この異変を察した自律神経は、発汗させて体温を下げるように働きます。
そして呼吸が苦しくなって水風呂に入ると、激しい温度差で交感神経が刺激され、血圧が急上昇してさらなる自律神経の働きを必要とします。当然、脳疲労は蓄積します。高温サウナと水風呂の往復は血圧の上昇と低下をくり返すので、ヒートショックを起こして脳梗塞や心筋梗塞の原因にもなりかねません。とくに自律神経の働きが弱くなる40歳以上の人は注意が必要です。
疲れにくい温泉旅のコツ
――計画、移動、観光、温泉浴、飲食、睡眠…すべての行動が日ごろと違うので交感神経が優位になりっぱなしで疲労がたまるということですね。では疲れにくい温泉旅の方法はありますか。
梶本医師:実のところ、休日に疲れを回復させるには、安心できる自宅で何もしないで、ごろごろ、だらだらと過ごすことがもっとも良い方法です。
それでも旅に出たい場合は、できるだけ近場で3泊以上とし、移動しない日を設定することです。また、温泉は38~40度程度のぬるい湯に半身浴で10分以内、1日2回までにしましょう。肩までつかりたい場合は、1~3分以内とし、それ以上は半身浴に切り替えてください。
目安として、汗ばんでくると自律神経に負荷が強くなっているサインです。汗ばんできたな、と思ったら湯から上がりましょう。汗が流れ出すと運動のし過ぎと同じで、脳が疲れていると察知してください。
そして、食べ過ぎ、飲み過ぎにならないように、日ごろの食事量程度をよく噛(か)んでゆっくりいただいてください。消化吸収は、副交感神経が優位にならないと促進されません。旅先で便秘になりやすい理由は、緊張や興奮で交感神経が優位になり続けているからです。
疲労回復にとって最重要なのは睡眠です。寝る前3時間は水や白湯以外は口にしないで、7時間ほどは睡眠時間をキープしましょう。翌朝すっきりと起きることができたら疲れは回復していますが、起きづらいなあと思ったら疲れがたまっていると意識して、その日の行動をセーブしてください。
――疲れにくいサウナの活用法はありますか。
梶本医師:入らないにこしたことはありませんが、どうしても活用したい場合は、急な温度差を極力避けてください。先に湯につかって体を温めてから、高温サウナではなく40~60度のミストサウナやスチームサウナを5分程度利用するようにします。そのほうが皮膚の乾燥も防ぐことができます。サウナ後の水風呂は避けて、ぬるい温度のシャワーをしてください。その後、安静にする時間を持ちましょう。
――ありがとうございました。癒しの温泉旅のつもりが、緊張と興奮、移動と温泉浴という運動過多、食べ過ぎ・飲み過ぎで消化不良、さらに睡眠不足と、逆に疲れ旅に出かけているだけだった……なるほど、どれも思いあたります。次の旅では近場で3泊以上とし、温泉の入り過ぎをセーブし、ゆっくり休憩する時間を設けたいものです。
取材協力・監修:梶本修身 構成・文 藤井 空/ユンブル