触ることができるから
安全なライオンというわけではない

――バックステージでの彼らはとても穏やかな表情をしていますが、それでも野生の血が騒ぐ瞬間はあるのですか?

もちろんです! 私の仕事は、常に危険と隣り合わせです。檻を隔てないで接して触ることもできるから、大人しくて逆らわないライオンというわけではありません。

今日は無理だなと判断したら彼らに触れることはしません。ライオンだって機嫌がいい日もあれば、悪い日もある。私たちと同じですよ。

「週に一度はエサ抜き」「機嫌が悪くショーに出られない日も」…調教師が明かすサーカスのライオンたちの舞台裏。「ハッピーなライオンは、ハッピーなショーができる」_8
声を使い分けて、的確な指示を出す。手にしたスティックは動きを誘導するためで、ライオンを叩いたりすることはない
「週に一度はエサ抜き」「機嫌が悪くショーに出られない日も」…調教師が明かすサーカスのライオンたちの舞台裏。「ハッピーなライオンは、ハッピーなショーができる」_9
ショーの構成をするのも、マイケルさん。ライオンの体調によって、台の距離を微調整するなど、日々工夫をしている

――これまで、もっとも危険を感じたシチュエーションは?

ショーの最中にライオン同士がケンカを始めたときです。とにかく引き離さないといけないのですが、間に入ることで、私がターゲットにされる可能性があります。

ファイトモードから切り返させるためにさまざまなことをして、1頭をいったん退場させてからショーを続行しました。

――どういったことがケンカの原因だったのでしょう?

よくある小競り合いの原因の多くは些細なことです。ショーの時に使う椅子や台は「これが自分の」という意識があって、別のライオンが触ると怒ることがある。

餌の取り合いということもある。バックヤードの運動場に爪とぎ用の丸太がおいてあるのですが、これも取り合いになることがある。大げんかになる前に収めて、興奮がおさまらないライオンがいたら別のところで落ち着かせてから戻します。

――それができるのは、マイケルさんがライオンたちのボスだから?

いえ、経験によって対処の仕方を知っているだけです。決してボスというわけではありません。言ってみれば、一番上のお兄ちゃんみたいな感じではないでしょうか。

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顔をすり寄せてくる仕草は、まるで猫のよう! しかし彼らは、決して大きな猫ではない

――では、マイケルさんにとってライオンたちはどんな存在なのでしょう?

Everything. Their life is my life. すべてです。
彼らの人生は私の人生。私と妻のボビー、2人の息子たち、そしてライオンたちは、ファミリーなのです。

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ボビーさんは、愛する妻であり、仕事のパートナー