――今後はどんな作品を生み出していきたいですか。そして、いよいよプロとしての第一歩を踏み出す今、氏家さんにとって「書く」ことの意味は?

今後はとにかくいろんな作品に挑戦してみたいと思いますが、これまで『双蛇に嫁す』を含め、自分とは完全に切り離した作品を書くことが多かったので、もう少し自分に近い、自分が実感をもって語れる物語を書いてみたいです。

とはいえ、次回作の構想はまだこれからですので、担当さんと相談して、読者の読みたいものと自分が書きたいものを両立できるよう考えていきたいです。

今回、『双蛇に嫁す』が受賞し文庫化されるチャンスをいただいて、改稿を通して、プロとして書くために必要な様々なことを学びました。公募時代はとにかくたくさん書くことを最優先していましたが、今後はそれだけではだめだなと。改稿作業で得た学びを生かして、作品の質を強化していきたと思っています。

私は、書くことが好きです。書いている最中はキツくて苦しいことも多いんですが、でも何のために書くかというと、やっぱり「楽しいから」。自分でも矛盾しているなと思いますが――。

子供の頃から人見知りで、人とリアルなのコミュニケーションが苦手だった自分にとっては、創作物を読むことが日々を生きる原動力ですし、自分は物語に対して恩があると感じています。そんな物語に対して、自分が語り手になることで、少しでも恩返しがしていけたら嬉しいです。

『双蛇に嫁す 濫国後宮華燭抄』
著者:氏家仮名子 装画:田村由美
〈カズレーサーが激賞〉「グンバツに面白かった。本当に読めて良かった」新星・氏家仮名子が目指す少女小説としてのファンタジーとは_1
2023年2月16日発売
814円(税込)
文庫判 336ページ
ISBN:978-4-08-680492-9
2022年集英社ノベル大賞〈カズレーザー賞〉受賞!
皇帝と妃、双子同士の結婚。圧倒的スケールで描かれる、激動の中華王朝婚姻劇!!

草原の民アルタナの娘、シリンとナフィーサ。異母姉妹ながら共に育ち、容姿も双子のように瓜二つの2人だが、シリンは活発で弓と騎馬が得意、ナフィーサは気が優しく刺繍と料理を愛する。ある日、族長である父はシリンとナフィーサを本当の双子に仕立て上げ、南方の大国・濫に輿入れさせることを告げる。濫国は双子信仰が盛んであり、折しも現在の皇帝も双子だった。その彼らが、双子の娘を後宮に探し求めているというのである。
草原の和平のためアルタナを離れ長い旅の末、濫国の王城・永寧宮にたどり着いた偽りの双子姫。シリンは弟帝の暁慶の後宮に迎え入れられ、「杏妃」なる名を与えられるが、初夜の床にて「未来永劫、お前を抱くつもりはない」と言い放たれてしまう。故郷の花嫁衣装も、名前も、全てを奪われ、体を繋がぬまま濫の妃となったシリンの運命は、やがて濫国とアルタナを巡る、大いなる時代の奔流に呑み込まれていく――。
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