60歳を過ぎてからの食事には“コンビニ弁当がいい”のはなぜ? ラーメンを週5回食べても問題なし、むしろ「食べない害」を気にしなければいけない恐るべきワケ
年をとると食が細くなり、食べることがおざなりになる人も少なくないだろう。だが、食事をおろそかにすると、その後の人生の質(Quality Of Life :QOL)が大きく低下してしまうという。老いと向き合う中で最も重要な要素となる「食」……60歳以降は何をどう食べればいいのか。『60歳からはやりたい放題[実践編] 』(扶桑社新書)より、一部抜粋・再構成してお届けする。
『60歳からはやりたい放題[実践編]』#1
「べジ(野菜)ファースト」より「プロテインファースト」
食事をする際、食材ごとに食べる順番を意識することも、体の老化防止に効果的です。一番のポイントは、糖質をできるだけ後回しにして、血糖値の急上昇を避けることです。
糖分を摂って血糖値が急に上がると、脳は血糖値を下げるためにインスリンというホルモンを分泌します。血糖値が緩やかに上がる分には問題ないのですが、急上昇すると、脳は「この血糖値を早く下げなくてはいけない」と判断し、多くのインスリンを分泌します。
インスリンには糖分を脂肪分に変える働きがあるため、血糖値の急上昇が起きることで、体に余計な脂肪をため込んでしまうのです。
だからこそ、食事をする際は、血糖値の急上昇を避け、緩やかに上昇するような食べ方を心掛けてほしいのです。
その上で、お手本にするべきなのが、日本の懐石料理です。料亭などの食事では、最初に野菜や魚などを使った前菜が出て、焼き魚、肉などの主菜を経て、最後に〆としてご飯が出てきます。

実は、これは血糖値の急上昇を避け、老化に対抗する上で、非常に効果的な食べ方です。
食事の最初に野菜を食べると、野菜に含まれる食物繊維がその後に摂取する糖質の消化吸収を遅らせ、血糖値の急上昇が抑えられ、ダイエットや糖尿病の予防・改善の効果があります。
昨今は、この「ベジ(野菜)ファースト・カーボ(炭水化物)ラスト」という考え方が普及しており、多くの方が実践するところかと思います。
ただ、私自身は、60代以降の人は、たんぱく質を最初に摂る「プロテインファースト」が望ましいと感じています。
人間は誰しも、次第に食が細くなります。最初に野菜を食べる「べジファースト」を貫いていると、野菜だけで空腹感が満たされて、たんぱく質をしっかり摂ることができません。メイン料理を十分に味わうこともできないため、食事を楽しめなくなってしまいます。
だからこそ、まずは「プロテインファースト」で、次が野菜、その次が炭水化物という順番に変えてみてほしいと思います。しゃぶしゃぶなどもそれが可能な料理です。
コンビニ弁当やラーメンは体に良い?
食事を作る気力がない日は、食べ物を買ってきて家で食べてもいいし、外食してもいいと思います。中食や外食は、自炊より塩分や脂肪分が多くなる傾向がありますが、それを差し引いても、60代以降は「食べないこと」のほうが体にとってマイナスになるからです。
一般的に「体に悪い」と言われるコンビニ弁当も、60代以降であれば、食べないよりは食べたほうが体には良いのです。
「コンビニ弁当は添加物などが多くて、体に害があるのでは?」と思うかもしれません。たしかに、コンビニ弁当は、手作りのお弁当に比べたら、味付けも濃いので「体に悪そう」と感じるでしょう。
ただ、コンビニの弁当を見てみると、実にさまざまな食材が入っています。
たとえば、幕の内弁当ならば、鮭などの焼魚に卵焼き、野菜などの煮物にお漬物……など、実にいろいろなおかずが並びます。これを自分の家で作れと言われたら、相当難しいのではないでしょうか。
食材も、20〜30種類くらいは入っているはず。手作り弁当で、ここまで多彩な食材を使えることは少ないでしょう。食品添加物の害も通常10〜20年後の話なので、ある年齢になれば、それほど気にする必要がありません。

食材は偏らず、いろんなものを食べよう
「いろんな食材を食べること」は、健康を維持するためには大切なポイントです。しかし、健康志向が高い人ほど、「免疫力がアップする納豆は体に良いから、毎食、納豆ばかり食べる」「玄米は完全食だから、玄米しか食べない」など、何か特定の食べ物だけに偏りがちがちです。
この「特定の食品ばかり食べる」行為は、実は健康には逆効果です。
百歳以上まで生きた長寿の人たちが何を食べてきたかを検証した名著『長寿の噓』を上梓した、医学博士の柴田博先生も、「偏らないで何でも食べることが、長生きする秘訣だ」と指摘しています。
仮に栄養学的には何も意味がなさそうな食材であっても、その食べ物に含まれている「微量物質」と呼ばれる物質が含まれています。
同じものばかり食べ続けることで、これらの貴重な物質を摂取する機会を逃してしまい、体にさまざまな不調が生じます。
ただでさえ、60代以降は少しずつ栄養の吸収率が落ち、亜鉛などの微量物質が不足しがちです。食べ物が偏ってしまった結果、体に不調を起こしたり、精神を病んだり……という事態を引き起こしかねません。
だからこそ、一食でさまざまな食材が食べられるコンビニ弁当は、むしろ体に良いとも言えます。
ラーメンを週5回食べたっていい
「体に悪い料理」の代名詞であるラーメンにしても、最近の無化調(化学調味料を使用していない)のラーメンには20〜30種近い野菜や豚骨、鶏ガラといった食材が溶け込んでいるので、「いろんな食材を食べる」という観点からは、決して悪いものではありません。
私自身、血圧はかなり高いほうですが、週に4〜5回はラーメンを食べています。

もちろん、365日、毎食コンビニ弁当やラーメンを食べるのはお勧めしませんが、週に何回か食べる程度であれば、問題はありません。
50代まではメタボリックシンドロームなどを気にして食を制限していた人でも、60代以降はむしろ「食べない害」を気にしたほうが良い。
自分で料理を作る気力がなく、コンビニ弁当やラーメンなどを口にすることに罪悪感を持って、「食べない」という選択をするほうが、よほど体に悪いのだと心してください。
文/和田秀樹 写真/shutterstock
『60歳からはやりたい放題[実践編] 』(扶桑社新書)
和田 秀樹 (著)

2023/9/1
¥968
208ページ
978-4594095567
ベストセラー『60歳からはやりたい放題』の進化版!
前向きで毎日が楽しくなる60の具体策
これさえやれば大満足人生!
・肉を食え!
・健康診断を受けるな!
・遺産を遺すな!
・若作りをしよう!
60歳以降の不安が解消!
残りの人生を幸せに生きるには?
【目次】
第1章 我慢しない食事こそ、健康の源
第2章 医者や健康診断に騙されるな
第3章 若作りで老化を食い止めよう
第4章 好きな趣味に没頭して前頭葉を刺激すべき
第5章 やりたい仕事を気楽に楽しむ
第6章 お金を使いまくって幸せに
第7章 他人を気にせず自分の人生を生きる!
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