「ガンは放置したほうが長生きできると思う」「高齢者は大学病院に行くな!」人気東大卒医師が警鐘
まだ見ぬ老後への不安は、その原因を自分で調べたり、何かしらの対策を取ったりするだけで、大きく軽減される。「いま」を全力で楽しむ和田秀樹流の〝幸福論〞を『90歳の幸福論』(扶桑社)より、一部抜粋・再構成してお届けする。
『90歳の幸福論』#2
「がん」は誰にでも起こりえる
日本人の死因として、最も多いのは「がん」です。
がんはほかの病気に比べると致死率が高いし、治療時の抗がん剤などによる副作用が苦しいせいか、「がんになったら死んでしまう」「がんになりたくない」と考えている方が非常に多いです。
ただ、実はがんという病気は、歳を取ると誰にでも起こりえる病気です。がんは、うまく分裂できなかった細胞が次第に増えていった結果、起こります。
そして、歳を重ねるほど細胞の正確な分裂は難しくなり、できそこないの細胞が増えていきます。つまり、がんは老化現象の一種なのです。

無理に手術や治療をすると体に大きな負担
以前、私は毎年100人以上の高齢者の解剖結果を目の当たりにしてきましたが、85歳以上の人で体内にがんが見つからない人はひとりもいませんでした。
若い人の場合はがんになると進行が速いのですが、多くの高齢者の場合、進行がゆっくりです。だから、70代以上の方ががんの告知を受けた場合は、過度に治療せず、放置したほうが実は長生きできるのではとも思います。
まだ体力がある若い人ならば、手術や治療でがんを治すことを考えるのもひとつの方法ですが、若い頃に比べると体力が弱い高齢者の場合は、無理に手術や治療をすると体に大きな負担を与えます。
医師「自分が病にかかって死ぬならがんがいい」
QOL(人生の質)を著しく下げながら余生を過ごすよりは、がんとともに残りの人生を悔いなく楽しく過ごすという選択もありだと思うのです。
実際、医者の間では、「高齢者にとって、がんは幸せな病気」「自分が病にかかって死ぬならがんがいい」などと言われることも多いのです。それは、自分の死期がわかるし、高齢者の場合は進行が遅いので、手術や治療をしなければ、最後の最後の段階になるまではさほど痛みや苦しみを感じずに済みます。
死期がわかっているからこそ、自分の人生を悔いのないように思いっきり謳歌できる。その点も、「がんが幸せな病気」と言われるゆえんではないでしょうか。

実験台が嫌なら大学病院に行くな
病院を選ぶとき、ひとつ覚えておいてほしいのが、大学病院は避けるということ。
多くの人は、「大学病院のほうが最先端の研究をしているので、よい治療が受けられるに違いない」「大学病院の最高峰である東京大学での医療が一番いいはずだ」と考えがちです。
でも、私自身が思うに、自分が〝実験台〞になってもいい、あるいは医学の進歩のために貢献したいという気持ちがない限りは、大学病院を選ぶ必要はありません。
アメリカをはじめとする海外の国では、大学病院は一般の病院よりも治療費が安く設定されています。その理由は、大学病院は、研修医に学びの場を提供したり、患者さんの体を病気の研究のために活用しているからです。普通の病院のように「治すこと」を専門にしていない分、大学病院に入院する場合は、まだ不慣れな研修医たちの練習台や新しい薬の実験台になることも厭いとわない気持ちを持つことが必要です。
普通の病院で治療を受けたほうが、技術的にも金銭的にもメリット
2014年、北関東屈指の名の知れた医療機関である群馬大学病院で、同じ執刀医が手術した患者さんが30人も死亡した事件がマスコミで報じられました。これは、執刀医の腕が未熟だったにもかかわらず、病院側がきちんと精査せず、同じ医師に執刀させ続けたことが問題でした。
群馬大学病院の事件は表沙汰になりましたが、同じような実態がある大学病院は、決して少なくないのではと思います。
練習台になるリスクを秘めている上に、大学病院であっても普通の病院であっても治療費は変わりません。ならば、普通の病院で治療を受けたほうが、技術的にも金銭的にもメリットが大きいのではないかと私は思います。

タバコを吸ってきたけれども、90代になっても生きている
どんなに医学が進んだとはいえ、人間の体はいまだわからないことだらけです。
年齢が上がれば上がるほど、わからないことは増えていきます。
「ずっとタバコを吸ってきたけれども、90代になっても生きている」
「医者の言うことなど聞かないでお酒ばかり飲んで生きてきたけれども、90代でも元気いっぱいだ」
「70代でがんが見つかったけれども、放置していたらそのまま90代まで生きている」
などという人も現実にはたくさんいます。

自分が生きてきた人生を信じよう!
そうした人たちに、医者たちが、「タバコは体に悪いのでいまからでもやめたほうがいいですよ」「お酒を飲まないでください」「がんの手術をしたほうがいいですよ」などと言う必要はあるのでしょうか。
私が担当医だったとしたら、「よかったですね。これまでその方法で生きてこられたのですから、そのやり方を信じたほうがいいですよ」と太鼓判を押すと思います。
自分がそこまで生きてきた人生を、もっともっと信じてほしいと思います。
『90歳の幸福論』(扶桑社新書)
和田秀樹

2023/3/1
968円
192ページ
978-4594093891
50万部超の大ベストセラー『80歳の壁』著者の最新作!
92歳の母を持つ高齢者医療の医師がいまいちばん伝えたいこと
「壁」の先にある人生最後の“ごほうび”の時間!
【健康】【お金】【生活習慣】【介護】
人生100年時代、気楽に「老い」を楽しむコツ
(目次)
▼第1章 幸せなお年寄りの条件
・年寄りが不幸だなんて、誰が言った
・認知症への大きな誤解とは?
・老いれば見栄や嫉妬から解放される!
・「高齢者になるのは怖い」という誤解が広まったワケ
・老いは人と比べられない
・要介護を避けたければ「フレイルサイクル」に陥るな
・高齢者に大切なのは「これがしたい」という意欲
・前頭葉を刺激し続けて活性化させよう!
・老後こそ脳や体に刺激を与えるべき
・愛されるお年寄りと愛されないお年寄りの壁
・常識に囚われすぎると窮屈な老後に
・完璧主義だと老け込みやすくなる……
▼第2章 他人や道具を頼って第2の人生を楽しむ!
・日本の高齢者は他人に頼らなさすぎる!
・道具で行動のハードルを下げよう
・補聴器で認知症の入り口を遠ざける
・「年寄り扱いされたくない」が一生のケガに……
・2回骨折しても歩ける92歳の母
・高齢者こそ情報発信をしてほしい!
・「人の力を借りる」ことが「老い」の解決策
・ 助けてもらう下地をつくっておく
・「一足先にお世話になるね」の精神
・デイサービスも徹底的に利用しよう
・なぜ家族に介護をさせないほうがいいのか?
・「できること」を喜ぶ
▼第3章 医者を信じすぎず健康な高齢者に
・医者の言葉を信じる必要はない!
・「個人差」が無視される現代医学
・欧米の健康法をそのまま導入する日本の医師
・健康診断の数値は信じなくていい
・なぜ医者はたくさんの薬を処方するのか?
・人によって薬の適正量は違う
・90 代は認知症が多数派
・「認知症=人生の終わり」ではない
・「きんさんぎんさん」のように幸せなお年寄りに
・見逃されがちな「高齢者のうつ病」
・「がん」は誰にでも起こりえる
・実験台が嫌なら大学病院に行くな
・自分が生きてきた人生を信じよう!
▼第4章 老後のお金を心配しすぎていませんか?
・歳を重ねるほどお金はいらなくなる
・元気なうちにお金を使いまくろう!
・「終活」をおすすめしない理由とは?
・子どもに財産を残してもケンカになるだけ
・「自分は役に立たない」と思わなくていい
・消費する高齢者こそ、日本経済を救う
・介護に必要な金額とは?
・介護保険は申請が必要
・「老人ホームに入れないのでは」と心配する必要はない
・収入があっても生活保護は受給できる
・生活保護は恥ずかしくない!
・理想的だった祖母の葬式
・本当の終活とは?
・可能な限り、働くという選択肢もある
▼第5章 “ごほうび”の時間を最大限満喫する生活習慣
・高齢者こそ栄養価が高いものを食べるべき
・コレステロール値を上げるべき医学的な理由
・「自炊しなければいけない」に縛られるな
・「脳トレ」よりもアウトプット!
・日の光でセロトニンを増やす
・カラオケで幸せな老後をつくる
・メモの習慣で認知症を予防
・若い異性との接点をつくろう
・「若づくり」はできるだけしたほうがいい
・毎日の変化が老化を防ぐ第一歩
・「笑顔」と「謙虚さ」で愛されるお年寄りに
・「都合のよいお年寄り」にならない!
60歳以上の高齢者や90代の親を持つ人は必読!
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