「自分たちの必勝パターンだけでは勝てない」ネルソンズが語る、常連組が賞レースで勝ちきる難しさ
毎年のように賞レースで上位に進出するということは、それだけ“ネタの消費度”が激しいことも意味する。そうでなくても、まだ世間の目に触れていないフレッシュな芸人に有利に働くことの多い昨今の賞レースにおいて、ネルソンズのような中堅が勝ち切るのは並大抵のことではないという。
ネルソンズインタビュー♯3
「言いたくないですけど、僕らの笑いの取り方って…」

ネルソンズ。吉本東京所属。2010年結成。青山フォール勝ち(中央)、和田まんじゅう(左)、岸健之助(右)はNSC東京校14期生出身
――6番手のや団に抜かれるまでは暫定1位を守っていましたが、そこから7番手のコットン、8番手のビスケットブラザーズと立て続けに抜かれ、最終的には4位と、あと1歩のところでファイナルステージ進出を逃してしまいました。
和田 まあ、そうだろうなっていう感じでしたね。
岸 よくそこまで粘ったな、と。
――大会を終えたときは、率直なところ、どんな気持ちでしたか。
青山 頭を抱えました。これでもダメだったか……と。来年、どうしようって。本音を言えば、僕らは芸歴的にはだいぶきついんですよ。もう12年目ですから。決勝行って思いましたもん。俺らの芸歴、上から数えた方が早いんだ、って。今回獲らなかったら相当苦しくなるなという自覚はあったんです。
和田 これ、あんまり言いたくないんですけど、僕らの笑いの取り方って1つのパターンしかないんですよ。僕が追い込まれて追い込まれて、何を言うかみたいな。今回、そのパターンをとことん突き詰めた。もうマックスだと思うんです。
——それが武器なわけですよね。
和田 でも、さすがにもう無理だと思います。このパターンではこれ以上ウケない。
青山 来年も(決勝に)出ようと思ったら、新しい形を見つけないと難しいでしょうね。それは実感としてあります。な、岸。
岸 はい。
和田 このパターンでもう10年以上やってきてるんで、それ以外のパターンとなると、そう簡単にはできないと思います。
トリオでコントは難しい?

——漫才だとトリオはすごく難しい印象がありますが、コントも3人を活かすのは難しいなと思うことがあるものですか。
青山 前はありましたけど、今はあんまりないかな。ある程度、形はできたんで。前は岸がほとんど出てこないネタとかけっこうあったんですよ。でも、最近はもうないですし。
——やはり3人がバランスよく登場するコントの方が、ネタとしても出来はいいものなのですか。
青山 それはケースバイケースでしょうね。(2018年王者の)ハナコは3人目の出番が少ないネタでも、その3人目が出てきたところでブーストがかかる。出番は少なくても使い方がうまい。あれはもう彼らにしかできないですよね。今、僕らが同じような3人目の使い方をすると、見え方がハナコになっちゃうんで。
——これまでもいろんな壁と向き合ってきたと思うのですが、今回、直面している壁は今まで以上に分厚いですか。
青山 分厚いですね。今までとは感覚が違う。これをぶち破るには、どうしたらいいんだろう。本来、この形でいいはずなんですけどね。自分たちの必勝パターンを見つけたんだから。
——最強の武器を手に入れたわけですもんね。
青山 結局、賞レースで勝つためには……というところなんですよね。そのためには、新しい形を探さなければならない。
——準決勝以上に進んでいる連続年数で言うと、今大会のファイナリスト10組の中ではネルソンズの6年が最長なんです。準決勝がネタ2本制になった2017年から、ずっと準決勝以上まで勝ち進んでいます。つまり、ネタの消費度がもっとも激しい組と言ってもいい。
青山 マジできつい。
岸 キングオブコントはM-1と違って、結成年数による出場制限もないですしね。いつまで出続けるんだろ、とは思いますね。

メンバーの中では最年長にあたる岸
賞レースに出続ける難しさ

——何回も決勝までたどり着きながら優勝を逃し続けている組は、どこかで見切りをつけたりするものなのですか。
青山 さらば(さらば青春の光、決勝6回出場)さんは、もう出てないですね。しずる(決勝4回出場)さんは出続けてます。ジャンポケ(ジャングルポケット、決勝4回出場)さんは休んだ年もありましたけど今年はまた出ていますもんね。
——ジャングルポケットやしずるほどの実績のある組が毎年、賞レースのためのエンジンに火を入れ続けるというのは、なかなか大変そうですね。
青山 大変なんてもんじゃないと思いますよ。
——ネルソンズのメンバー構成はジャングルポケットを想起させますよね。キャラクターの濃い斉藤(慎二)さんの役割は和田さんが担っていて、太田(博久)さん的なリーダーでネタを作る役割は青山さんが担当していて、おたけさんと岸さんの存在感もどこかだぶります。
青山 僕がジャンポケさんの背中を追っている部分があるので、似るだろうなとは思いますね。ずっとお世話になってる先輩でもあるので。
――今回ばかりは、なかなか再スタートを切ろうという気持ちにはなれませんか。
青山 僕的にはもう動き出そうかなっていう感じなんですけど、まだ3人では話し合っていません。
和田 まあ、いいネタができたら、みたいな感じかな。いいネタができたら本気でやろうかなって。
――3年連続ファイナリストのニッポンの社長の辻さんも、次は、本当に自信のあるネタができれば出るけどみたいな保留付きの言い方をしていました。
青山 その気持ち、めっちゃわかるな。でも、わかるけど、そう思うっちゃうと難しいんだよな。ネタって、やっぱり出るって決めないと作れないですもん。
――辛い作業だけに目的がないとそこに自分を追い込めないんでしょうね。
青山 そういう待ちの姿勢でいいネタができたら、マジでラッキーですけど。まあ、いいネタは、できるんですよ。ただ、賞レース向きのネタはなかなかできない。現状、ノルマとして最低でも1年で18本は新ネタを作ってるんです。でも、キングオブコントで勝てるネタとなると、そのうち1本残るかどうか。そこが難しいところなんです。

取材・文/中村計 撮影/村上庄吾
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