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自分より小さな子が土砂崩れに巻き込まれて

人生や考え方が変わった日はありますか? 私にとってそれはとても明確で、2004年10月23日です。
この日の17時56分、新潟県中越地震が起きました。

私は当時7歳。父は単身赴任で新潟を出て暮らしており、母と妹と3人暮らし。夕方だったので、いつものように3人で楽しくお風呂に入っていたタイミングでした。翌日が妹の4歳の誕生日だったこともあり、「今日が3歳最後のお風呂だね〜」なんて言いながら、明日の夕食に何を食べたいか話し合っていました。

そんな普段よりちょっとワクワクしながら過ごしていたお風呂の時間が、あの地震で一変しました。

人生で初めての大きな地震。とはいえ私が住んでいた地域の揺れはそれほどではなく、大きな被害はありませんでした。

中越地震に被災した7歳から毎年10月に遺書を書いている。フジテレビ渡邊渚アナウンサーの死生観とは_1
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ただ問題は、母方の祖父母が震源地の中越に住んでいたことです。

お風呂から慌てて出て髪も濡れたままの母が、電話を片手に今にも泣き出しそうな不安な表情でテレビからの情報を見ていました。普段肝っ玉母さん的な人で、こんな母の姿を初めて見たので、これは只事ではないと理解しました。

地震の翌日、まだ祖父母の安否がわからない中、母は妹の誕生日ケーキを作りました。そんな気になれないだろうに。

きっと母なりに、この日が悪い思い出にならないように、涙をこらえて必死に取り繕っていたのだと思います。母にだけ頑張らせてしまっている気がして胸が苦しくなった記憶があります。

そしてテレビから連日流れてくる地震のニュースにも心を打たれました。自分より小さな子が土砂崩れに巻き込まれて生き埋めになっている。

新潟ではよく見る山間の道、たまたまあの日あの時間に私はそういう場所にいなかっただけ。今生きているということが当たり前じゃないということを子どもながらに認識させられました。

中越地震に被災した7歳から毎年10月に遺書を書いている。フジテレビ渡邊渚アナウンサーの死生観とは_2