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きっかけは、ゲームセンターに置かれていたパチンコが面白かったこと

[本記事で紹介する事例における罪状]
詐欺(特殊詐欺)
郵便局員を名乗って被害者の家を訪問し、現金の入った袋を受け取ってコインロッカーに入れることで収入を得ていた

トモヤは東京の大学に進学し、一人暮らしをするようになって自由を謳歌していた。
 
実は、大学を休学してアルバイト中心の生活を送っている。仕送りはもらっているが、全然足りないのだ。パチンコに費やすようになったからである。

きっかけは、ゲームセンターに置かれていたパチンコが面白かったことだ。ゲームセンターに行くことなんてこれまで許されなかった。一人暮らしをするようになったら早速行ってみようと思っていた。そして、本物のパチンコ店でやってみたいという衝動が抑えられず、店で打ってみた。

すると、ビギナーズラックで大勝ちしてしまった。たった1000円が5万円になったのである。

ゲームとして楽しいだけでなく、お金まで稼げる!
夢のような遊びだと感じて、パチンコにハマったというわけだ。
儲かった5万円はあっというまに消え、仕送りもアルバイト代もつぎ込んで、「取り返さなくては」とパチンコ店に行く。悪循環に陥っていた。

両親は、トモヤのそんな生活を想像もしていない。大学で勉強を頑張っていると信じている。

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長男のトモヤには、自分のような思いをしてほしくない

父親のかねてからの願いは、「いい大学を卒業して大企業に就職し、世界を股にかけて活躍してほしい」というものだ。

父親自身の果たせなかった夢である。

彼は本当は大学に行きたいという強い希望があったが、家庭の金銭的事情により叶わず、高校を卒業して地方公務員となった。今のポジションは係長。大卒の職員に立場的に抜かれることが多く、「大学さえ出ていれば」と忸怩(じくじ)たる思いに駆られるのだった。

長男のトモヤには、自分のような思いをしてほしくない。

とにかく、いい大学に行って、いい会社に入る。
それがトモヤのためだと考えていた。

父親は何かにつけてトモヤに指示を出した。小学生の頃から、
「健康のために野菜中心の食生活を送りなさい」
「運動も必要だから、サッカーをやりなさい」

中学生になると、生活にあれこれ口出ししてコントロール。
「ゲームをしてもいいが、学習につながるものにしなさい」
「門限は確実に守りなさい」
「洋服はこれを着なさい」

さらに勉強面での指示は熱が入った。
「人一倍勉強しなさい」
「そろそろ遊ぶのはやめて受験に集中しなさい」

こんなふうに命令口調で指導するのが普通だった。