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教養・カルチャー 2023.06.12

安倍晋三が昭恵夫人の前で泣き続けた夜…ゴルバチョフと蜜月関係を築いた父・晋太郎が死を目前に勝ち取った「二島返還」メッセージ

安倍晋三は政治家として、総理大臣として、男として、そして日本人として、どう生き、どう悩み、どんな功績を残したのか…。安倍晋三・昭恵夫妻をもっとも多く取材してきた作家・大下英治が初めて明かす物語を『安倍晋三・昭恵  35年の春夏秋冬』(飛鳥新社)から一部抜粋・再構成してお届けする。

  • 大下英治
  • #政治・経済
  • #大下英治
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『安倍晋三・昭恵 35年の春夏秋冬』#1

#2
#3
#4

選挙は晋太郎の生き甲斐

平成2(1990)年2月の衆院選は、晋太郎が清和会の会長に就任後、初めて迎えた衆院選であった。晋太郎は、一人でも多くの同志を当選させるため、まさに命がけで戦った。

晋三は、晋太郎が選挙を前にいつものように昂揚しているのが分かった。
「選挙は、命がけでやるものだ」というのが、晋太郎の持論である。晋三の目から見ると、竹下登の選挙好きは、選挙そのものをゲームとして見ているような気がするが、本質的に攻めの性格である晋太郎は、選挙の戦いのなかで、ある種の生き甲斐を見出しているとしか思えなかった。  

実際、晋太郎は選挙戦に突入すると、自分の健康のことなど忘れてしまう。武士が合戦で渡り合うとき、自分の体の一部の痛みなど意識しないのと同じである。 

医師は、晋三に告げていた。
「いくら体を酷使しても、それはあまり寿命とは関係ありません」 晋三には、それが本当なのかどうかは分からない。しかし、「親父がやりたいことをやらせたほうがいいだろう」と判断した。

「何をやっているんだお前!」森喜朗に激怒した理由

清和会事務総長の森喜朗は、晋太郎と二人で全国を手分けして飛び回った。移動の際には、ヘリコプターをチャーターした。

森が次の応援のため佐賀に向かうためヘリコプターに乗り込んだところ、晋太郎から無線電話がかかってきた。
電話に出ると、晋太郎は「何をやっているのだ、お前は! いま、どこに行っているのだ」と言う。森が「私は、いまから佐賀に行くところですが……」と答えると、晋太郎はこう叫んだ。 

「ダメだ! 早く××に行け!」 晋太郎は、まるで気でも狂ったような熱中ぶりであった。

この総選挙で、清和会はなんと二十二人もの新人議員を当選させた。一つの派閥で新人議員が二十人を超えたのは、自民党の結党以来、初めてのことであった。 

「俺とよく似た顔をしているな」

総選挙から7カ月後の9月14日、晋太郎は再び順天堂医院に入院。ウシオ電機会長の牛尾治朗は、晋太郎の異父弟で日本興業銀行常務の西村正雄(のちに頭取)を通じて、晋太郎の本当の病状を聞かされていた。 

晋太郎は、西村の写真を見るたびに、「俺とよく似た顔をしているな」と気になっていたというが、なんと西村が子供のころ父・寛と離婚して出て行った母・静子の稼ぎ先で生まれた義理の弟であることがわかった。それからというもの、二人は兄弟づき合いをしていた。

牛尾は、西村に勧めた。 「がんセンターに移したほうが、いいんじゃないか。臨床例からいっても、がんセンターのほうが多いし」

しかし、政治家にとって病気を明かすのは致命的となる。ましてや、癌ならなおさらだ。癌であることは、すでに周辺に知られているが、それでもなお躊躇いがあった。 

モスクワ「赤の広場」で平家踊り

9月22日から、モスクワで、日本の文化芸能をソ連の一般市民に紹介する「日本文化週間」が開かれることになった。この年の一月、晋太郎がゴルバチョフと会談した際、開催を提案したのだ。 

晋太郎は、日本文化週間に自民党代表団の団長として訪ソする予定だったが、体調が思わしくない。療養に専念することになった。代わりに、小渕恵三元官房長官が団長を務めることになり、晋三は父親の名代として訪ソ団に加わった。 

昭恵も、下関の「平家踊り」を披露するグループに参加し、一緒に訪ソすることになった。 平家踊りは、源氏に追われて下関の壇ノ浦に散った平家一門への供養の踊りが源といわれている。三味線、勇壮な和太鼓、空樽が軽快なリズムを刻み、踊り手は「糸繰り式」といわれる、手を上に伸ばして交互に繰るような動きを基本としている。 

北島三郎の演歌に、モスクワっ子たちは酔った

昭恵は、晋太郎の秘書の奥田斉からこう言われた。 「これから下関市民になるのだから、地元伝統の踊りを習ったほうがいいでしょう。モスクワで代表として踊ったら、皆さんから評価していただけるよ」

昭恵はすぐに踊りの指導を受け、必死になって練習した。 赤の広場での本番当日、中曽根派(政策科学研究所)に所属しながらも、「晋太郎を総理に」と情熱を燃やしていた山口敏夫も参加していた。山口は会場の入口で、自前で買ってきたチョコレートを通行人に配っていた。 

山口は、昭恵に茶目っ気たっぷりに言った。 「ソ連の人たちを、たくさん呼んでおいたからね」 赤の広場には、なんと四十万人もの人々が詰めかけた。日本の花火に見入り、北島三郎の演歌に、モスクワっ子たちは酔った。

ソ連の国営テレビでも連日、日本文化週間の模様が放映され、これまでソ連を目の敵にしてきた日本人との、まったく新たな文化交流が繰り広げられた。 昭恵は高まる緊張感のなかで、見事に平家踊りを踊り切った。 

10月6日、ソ連外務省から「二島返還」を示唆するメッセージ

9月30日、晋三はソ連から帰国するや、その足で順天堂医院に父親を訪ね、父親にモスクワでの大イベントの成功について報告した。晋太郎は、自分が行けなかったことを、改めてひどく残念がっていた。 

10月6日、ソ連外務省から「二島返還」を示唆するメッセージが伝達された。そして11月30日、晋太郎は順天堂医院を退院した。

しかし、平成3(1991)年1月19日、晋太郎は、順天堂医院に三度目の入院をする。病状はひどく厳しい。晋太郎は外務大臣、幹事長などの要職を歴任し、清和会を率いている。責任ある政治家として、今後のことも考えておかなければならない。

晋三は、心を鬼にして父親にこう告げた。
「お父さん、癌です」

「健康さえよければ、(海部内閣から)安倍内閣に代えます」

晋太郎は、「ああ、やはり、そうか……」と思いのほか冷静に受け止め、取り乱すことはなかった。そして、最後まで諦めなかった。 

病室には、清和会の幹部たちが次々に見舞いに訪れた。清和会四天王の一人、加藤六月は「健康さえよければ、(海部内閣から)安倍内閣に代えますから。みんな、そう思っていますから」と言って晋太郎を励ました。 

晋太郎の盟友で、党内最大派閥を率いる竹下登も間違いなく推してくれる。そもそも、竹下が総理を退任したあと、宇野宗佑や海部俊樹を後継総裁に据えたのも、晋太郎が総裁になるまで年代を若返らせないことが目的であった。 

しかし晋太郎は、ひどく無念そうに答えた。 
「いや、俺はまだ、健康に自信が持てないよ……」 

「森くん、安倍ちゃんのために、できるだけのことはしてやれよ」

その年の4月、ゴルバチョフが来日することになった。前年1月15日、自民党代表団の団長としてソ連を訪問し、ゴルバチョフと会談した晋太郎は、「ぜひ桜の花の咲くころにいらしていただきたい」と約束を取りつけ、積極的に訪日の道を開いてきた。歓迎レセプションの委員長も引き受けており、ゴルバチョフと日本で会うことを楽しみにしていた。

衆議院議院運営委員長の森喜朗は、「この路線を敷いたのは安倍さんなのに、その安倍さんがゴルバチョフに会えないなんて、そんな馬鹿な話はない」と唇を噛んでいた。

そう思っていたところ、森は竹下に呼ばれた。 「森くん、安倍ちゃんのために、できるだけのことはしてやれよ。あとは、俺が責任を持つから」 
森は、洋子に電話を入れた。
「安倍さんをゴルバチョフに会わせたいのですが、体調はどうですか」

「森先生、できれば安倍とゴルバチョフを会わせる方法を考えてやってほしい」

洋子は、丁重に断った。 
「お気持ちは嬉しいですが、ちょっと無理のようです。ご心配なさいませんように」 それからしばらくして、晋太郎の上席秘書の清水二三夫から、森に電話がかかってきた。

「森先生、できれば安倍とゴルバチョフを会わせる方法を考えてやってほしい」 森は「いよいよ体調が悪いな」と察し、竹下と相談した。 

「きみは、議運の委員長だ。だから、衆議院議長の桜内(義雄)さんが議長公邸での午餐会にゴルバチョフを招待するかたちにし、その席に各党の党首、各派の会長たちを招いたらどうだ」

竹下がそう提案した。 
だが、森はそれに反対する。 

「おそらく安倍さんは、立っていられない状況です」

「なるほど、それは名案ですね。でも、おそらく安倍さんは、立っていられない状況です。皆さんと一緒に昼食を取ることはできないでしょう」

そこで、桜内が各党の党首や各派閥の会長を議長公邸の庭に誘い、ドリンクパーティーのようなものを開いてもらう。その間を利用し、晋太郎とゴルバチョフと二人だけによる会談をセットすることにした。

早速、森は根回しに動いた。議運の委員長だからこそ桜内議長、各党の党首、各派の会長の了解を得ることに成功し、晋太郎・ゴルバチョフ会談が実現する運びとなった。

会見日を間近に控え、晋三は医師に制癌剤の投与を一時停止してもらった。制癌剤は、その副作用として体力を落としてしまうからだ。 

やせ細った身体をふくよかに見せるため、パッドを入れた

4月18日、晋太郎は、順天堂医院の病室で紺のスーツに着替えた。やせ細った身体をふくよかに見せるため、下着のシャツを二枚重ね合わせ、そのあいだにパッドを入れた。

このアイデアは、晋太郎夫妻と親しい友人、俳優芦田伸介夫人の話を参考にしたものであった。安倍夫妻が芦田の芝居を見たあと、楽屋を訪ねていろいろと話を聞いた時、芦田夫人がこう言っていたのだ。

「(役柄で)恰幅のいい感じを出すのにはシャツを二枚合わせて、そのあいだに綿を入れたものを作って着せるのですよ」

晋太郎を乗せた車は、順天堂医院を出ると、千代田区永田町二丁目にある衆議院議長公邸に向かった。道路が空いており、少し早めに永田町周辺に到着した。 
晋三は、晋太郎に声をかけた。 

晋太郎は、フワッと倒れそうに

「ちょっと、早すぎましたね」  
晋太郎は、車窓に映る永田町周辺の風景を愛おしむかのように言った。 

「それじゃあ、(時間潰しに)憲政記念館にでも寄っていくか」 
車は、永田町一丁目にある憲政記念館に滑り込んだ。 後部座席からゆっくりと降りた晋太郎は、木立のなかで大きく一回伸びをした。

「ああ、気持ちいいなあ」 
おそらく、これが晋太郎が思いきり外気を吸った最後の瞬間であった。

森は、衆議院議長公邸のなかでも、通常出入りのできない通用口の前で晋太郎の到着を待った。やがて、晋太郎を乗せた車が静かに姿を現す。晋太郎は、後部座席から降り立った。その瞬間、フワッと倒れそうになり、みんなが慌てて晋太郎の身体を抑えた。 

森はその光景を見ていて、「これが、あるいは最後のご奉公になるかもしれない」

衆議院議長公邸での会見の間は、入口の近くに設営してあった。ここのところ体調がいいとはいえ、長い距離を歩き回れる状態ではない。晋三は「車を降りてからできるだけ歩かずに済むよう、桜内先生や森先生らが配慮してくれたのであろう」と気づいていた。 

森は、晋太郎を風でしつらえた即席の会見の間に案内した。 
ゴルバチョフが姿を現すと、晋太郎は、顔を綻ばせ握手を交わす。

ゴルバチョフは、晋太郎に話しかけてきた。 
「私は約束を果たしました。桜がそろそろ咲きますよ」
晋太郎は頷いた。 
森はその光景を見ていて、「これが、あるいは最後のご奉公になるかもしれない」と、胸に熱いものが込み上げてきた。 

「頑張ってください。私はもう、遠くから見ていますから」

そこに、午餐会に招かれ庭にいた宮澤派(宏池会)会長の宮澤喜一が、ひょっこり顔を見せた。

宮澤は、「お元気そうじゃないですか」と晋太郎を励ました。
「宮澤さん、頑張ってください。私はもう、遠くから見ていますから」
晋三は、父親の言葉に「もう自分の命は長くないと思っているのだろうか」と感じた。 

ゴルバチョフとの五分間の会見を終え、晋太郎は病院に引き揚げた。 
ゴルバチョフ大統領に会えたこと、体力的にも乗り切れたことで、晋太郎は気持ちのうえでも満足していたのであろう。病院に戻ると、晋三に晴れやかな表情を見せた。 

その夜、安倍・ゴルバチョフ会見がテレビニュースで報じられた。晋太郎は、自分の姿を見てにこやかに晋三に言った。 

「おれも甘いところがあるけれど、
晋三も俺に輪をかけたようなところがあるからな」

「そんなに痩せてもいないし、これを見たら、みんな安心するな。これからは、ときどき出かけて、いろんな方にお会いしようかな」

晋三は、晋太郎が病気になってからは、いつもそばについていた。
晋太郎は、柔らかな表現はしないタイプで、病床に晋三が見えないと「どこに行っていたのだ。秘書なのだから、しっかりしなくちゃダメじゃないか」と叱った。 

また晋太郎は、妻の洋子に、晋三について常々こう言っていた。 「おれも甘いところがあるけれど、晋三も俺に輪をかけたようなところがあるからな」 

「ちょっと心細いようでもあるけれど、何とかやってくれるだろう」

そして半分冗談のようにこう続けたという。
「ちょっと心細いようでもあるけれど、何とかやってくれるだろう」

晋三が後を継ぐことははっきりしていたが、特に遺言めいたことはなかった。死期が近くなると、晋三を枕元に呼び、晋太郎は諭すように言った。 

「政治家になるのは、大変だ。お前も、相当覚悟をしないとダメだ。死に物狂いでやれ。そうすれば、必ず道は拓ける」

晋三は、これまで命を削って国のために働いてきた父親の姿を見て、改めて覚悟が固まった。 

昭恵の前で泣き続けた

5月15日午前7時7分、安倍晋太郎は、順天堂医院で膵臓癌のために亡くなった。67歳であった。

晋三は、父親の無念の死に男泣きに泣いた。5月16日の芝の増上寺での5000人が参列した通夜、翌日の8000人が参列した葬式と、忙しく動いている昼間はまだいい。が、夜になると、晋三は昭恵の前で涙を流し続けた。 

「父が亡くなった時はものすごく落ち込んでいて、ずっと泣いてたんですよ、夜になると。わたしは……もういい大人じゃないですか、こんな泣いてて大丈夫かというか、この人、政治家としてこれからやってくのに大丈夫なんだろうかって思いました。けれど、その後は主人の涙は、一回も見たことがないんです。第一次政権で総理を辞めた時。あの時ですら、涙は流さなかったですね」 

昭恵は、自らも一緒に涙を流しながら、夫を慰め続けた

昭恵は、自らも一緒に涙を流しながら、夫を慰め続けた。

晋三は死の2年前から、晋太郎が癌であることを知らされていたが、これほど早く亡くなるとは考えていなかった。そのため、父親の分まで立ち働いており、十分に話す機会をつい逸していた。その後悔と、父親を失った悲しみと、父親の後継ぎという重責が、激しい奔流のように一気に押し寄せてきたのかもしれない。 

何より、総理への道を目指して弛まぬ努力を続け、そこへ辿り着く一歩手前で病に倒れた父親の無念を思うと、晋三はどうにも居たたまれなかったのであろう。その悲しみが、やがて父親の志を継ぐ、固い決意へと昇華されていったと昭恵は見ている。

昭和35年の安保騒動のとき、幼い晋三が祖父・岸信介の家に遊びに行くと、家の周囲はデモ隊が取り巻いていた。しかし祖父は、子供であった晋三ら兄弟と遊ぶなど悠然としていた。 

マスコミをすべて敵に回しても、まったく動じなかった

のちに晋三が思うには、祖父には揺るぎない、「自分のやっていることは間違っていない」という自信と信念があった。世論から批判され、マスコミをすべて敵に回しても、まったく動じなかった。晋三は、祖父から、正しいと思ったことをやるときは、決して動じてはいけないということを学んだ。

父親の晋太郎は、晩年、ソ連との国交正常化や北方領土の返還に政治生命をかけていた。そのとき、すでに身体が悪く、肉体的に厳しいなかでソ連を訪問し、ゴルバチョフから「叡知ある解決を考えたい」という言葉を引き出した。その執念は、凄まじいものであった。

晋三は、父親から「政治家として目標を達成するためには、淡白であってはならない」ということを学んだのだ。

#2『安倍洋子「晋三の性格は父親、政策は祖父の岸信介だった」…国葬儀の式壇に置かれた安倍晋三の議員バッジともう一つのバッジ』はこちら

#3『年末は大阪・西成の夜回りへ、なぜ安倍晋三は昭恵夫人の”大暴れ”を見守ったのか…浮気・愛人ゼロだった稀有な政治家の夫婦仲』はこちら

#4『なぜ安倍晋三は森友騒ぎで「離婚したほうがいい」と言われても完全無視したのか…妻であり、愛人であり、看護婦だった、昭恵夫人』はこちら

『安倍晋三・昭恵  35年の春夏秋冬』(飛鳥新社)

大下英治

2023年5月18日

1800円

300ページ

ISBN:

978-4864109543

『安倍晋三 回顧録』(中央公論新社)がふれなかった
愛と真実の物語!


増上寺で行われた安倍晋三総理告別式で、昭恵夫人が挨拶でこう言った。

「十歳には十歳の春夏秋冬があり、二十歳には二十歳の春夏秋冬、五十歳には五十歳の春夏秋冬があります。(略)政治家としてやり残したことはたくさんあったと思うが、本人なりの春夏秋冬を過ごして、最後、冬を迎えた。種をいっぱい撒いているので、それが芽吹くことでしょう」

父・安倍晋太郎氏の秘書官時代から40年。
安倍晋三・昭恵夫妻をいちばん数多く取材してきた作家・大下英治が初めて明かす
人間安倍晋三と人間安倍昭恵

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