就労移行支援が抱える課題

——就労移行支援を受けたいと思っていても、支援対象にならない人もいますか?

長谷川 就労移行支援が適用になる基準は、お住まいの自治体によって異なります。発達障害の診断を受けている方だけでなく、いわゆるグレーゾーンの方でも支援が受けられる自治体がある一方で、グレーゾーンは対象外とする自治体もあります。

発達障害などで生きづらさを感じているすべての人が支援を受けられない点は、大きな課題だと感じています。

——現行の就労移行支援の制度は、他にどのような課題を抱えていると感じますか?

長谷川 就労移行支援を利用するための費用面が課題です。就労移行支援の利用料は、利用者の所得によって決まります。

生活保護を受給している世帯と市町村民税が非課税世帯は、無償で利用できます。
その一方で、市町村民課税世帯のうち所得割が16万円未満の世帯は、負担上限月額が9300円です。多くの利用者がこの「月額9300円」に該当するのですが、この費用を捻出することが難しい方が多い印象です。また、交通費がなくてお困りの方もいます。

「だったら、アルバイトなどで稼げばよいのではないか」という声もありますが、アルバイトができる=就労できる状態と判断されるため、就労移行支援事業所の対象外となってしまいます。

例えば、就労訓練としてアルバイトを週1回、就労移行支援の活動に支障が出ない範囲でしながら通えるようになるなど、何か対処策はないかと日々考えながら、自治体にも働きかけたいと思っています。

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——今後、さらに多くの人を支援していくためにどのような取り組みを考えていますか?

林田 現在、関東エリアのキズキビジネスカレッジはいずれも、入所を待っていただいている状態です。早めに就職したい方もいらっしゃるので、それが後ろ倒しになるのは心苦しいと感じています。
とはいえ、今の利用者もしっかりと支援して送り出さなければなりません。こういった状況を打破するため、拠点を増やす準備を進めています。

また最近「キズキクラウド」というeラーニングシステムをローンチしました。これはキズキビジネスカレッジで提供している授業が、クラウド上で受けられるサービスで、キズキの利用者だけでなく、提携する他事業所の利用者も活用できます。

支援内容の中には、対面が適しているものもあれば、対面である必要がないものもあります。この後者についてクラウドで提供することで、より多くの方に支援が行き届いてほしいと考えています。

それから、休眠預金を原資とした助成金事業として、キズキクラウドを活用したコロナ禍で就労困難を抱えた方の支援も行っています。対象者は障害者だけでなく、参加者の中には精神・発達障害者やグレーゾーンの方も一定数いらっしゃいました。こちらは2023年2月まで参加者を募集しています。

https://kizuki-corp.com/service/freelance-course/

今後も特性やニーズに即した支援を多くの人に届けられるよう、事業をアップデートし続けたいです。

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取材・文/綾瀬ゆうこ 撮影/塩川雄也