結婚したら奥さんの尻に敷かれるタイプ
桐生清桜との連合チームながら秋の準公式戦に出場できるなど、少しずつではあるが実戦も経験できている。課題は山積するが、キャプテンの北村が「プレーのスピードが上がって、シュートも入るようになってきた」と認めるように、一歩ずつ前進できている。
監督の西條から見てもそうだ。「レイアップとかのシュートも『お!』って思わされる時がある」といったプレーが、少しずつ見られるようになってきたのだという。
それでも監督は、あえて突き放すように「まだまだ」と笑い、亀山に成長を促す。
「そんなに器用なタイプじゃないのと、まだ体ができ上っていないから、自分のイメージとのバランスに苦しんでいるところはあると思います。
ただ、今はまだ『男子のバスケ部もあるんだ』と周りに知ってもらう段階で、来年入学する新1年生のなかで入部希望者が来てくれてからが本格的なスタートっていう感じです。陸斗もまだ心細いとは思いますが、それを含めて今のあいつはまだ修行中(笑)」
北村たちが「ちょっと挙動不審」と言い、監督が「結婚したら絶対に奥さんの尻に敷かれるタイプ」と評するように、亀山は感情を表に出すのが苦手なようである。
だが彼には、たったひとりの男子部員であろうとバスケットボールに打ち込める内に秘めた情熱、芯の強さがある。
インタビューされることなどなかった無名の選手は雄弁ではない。むしろ無口だ。しかし、核心を突く質問には、短くもしっかりと答えてくれる。
最後に尋ねた問いへの答えに、覚悟がにじむ。
――今でもバスケットボールは楽しい?
「はい。楽しいです」
――桐生市立商に入って、後悔はない?
「後悔はないです」
取材・文・撮影/田口元義