結婚したら奥さんの尻に敷かれるタイプ

監督は能代工・田臥勇太の一学年上のマネージャー。強豪・桐生市立商で唯一の男子バスケ部員が、女子に混じって練習を続ける理由_6

桐生清桜との連合チームながら秋の準公式戦に出場できるなど、少しずつではあるが実戦も経験できている。課題は山積するが、キャプテンの北村が「プレーのスピードが上がって、シュートも入るようになってきた」と認めるように、一歩ずつ前進できている。

監督の西條から見てもそうだ。「レイアップとかのシュートも『お!』って思わされる時がある」といったプレーが、少しずつ見られるようになってきたのだという。

それでも監督は、あえて突き放すように「まだまだ」と笑い、亀山に成長を促す。

「そんなに器用なタイプじゃないのと、まだ体ができ上っていないから、自分のイメージとのバランスに苦しんでいるところはあると思います。

ただ、今はまだ『男子のバスケ部もあるんだ』と周りに知ってもらう段階で、来年入学する新1年生のなかで入部希望者が来てくれてからが本格的なスタートっていう感じです。陸斗もまだ心細いとは思いますが、それを含めて今のあいつはまだ修行中(笑)」

北村たちが「ちょっと挙動不審」と言い、監督が「結婚したら絶対に奥さんの尻に敷かれるタイプ」と評するように、亀山は感情を表に出すのが苦手なようである。

だが彼には、たったひとりの男子部員であろうとバスケットボールに打ち込める内に秘めた情熱、芯の強さがある。

インタビューされることなどなかった無名の選手は雄弁ではない。むしろ無口だ。しかし、核心を突く質問には、短くもしっかりと答えてくれる。

最後に尋ねた問いへの答えに、覚悟がにじむ。

――今でもバスケットボールは楽しい?

「はい。楽しいです」

――桐生市立商に入って、後悔はない?

「後悔はないです」

監督は能代工・田臥勇太の一学年上のマネージャー。強豪・桐生市立商で唯一の男子バスケ部員が、女子に混じって練習を続ける理由_7
亀山陸斗(かめやま・りくと)2006年11月27日、群馬県出身。笠懸南中時代から桐生市立商に入学。ポジションはスモールフォワード。173センチ、61キロ
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取材・文・撮影/田口元義

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