今大会のキーワードは「スピード」だった
――『ぴったり』もネタ下ろししたときからずっと手応えはよかったのですか。
きん あのネタは最初、単独ライブで下したんですけど、悲鳴というか、「うわ〜」ってホラー映画を観ているときのようなリアクションが返ってきて。
原田 単独のときは、女物の衣装を脱ぐとき、ゆっくり脱いだんですよね。それで中から男が出てきたら、ヒャ〜ってなった。だから、ヒャ〜って言わせへんスピードに変えたんです。パパパパパパッと着替えた。そうしたら、「エッ? エッ?」っていう感じで、めっちゃウケだしたんですよね。
——確かにゆっくり脱がれたら、ちょっと怖い気がします。
原田 結局、今大会のビスケットブラザーズのキーワードはスピードでしたね。『野犬』も『ぴったり』も。スピードを上げたことで笑いになった。コントにおいてスピード感って大事なんやと思いましたね。キモいもの、怖いものが中和されるというか。
——2本目の点が出る前の心境はいかがでしたか?
原田 僕らのネタって、絶対好き嫌いが分かれるんですよ。1本目はそれがいい方に出た。ただ、1本目と2本目はまた種類の全然違うネタなんで、そこはどうなんやろ? という感じでしたね
――おふたりは昔、「何がおもしろいかわからん」とよく言われたそうですね。
原田 今も言われますよ。
きん バトル形式のイベントで審査員を務める作家さんから「設定から変過ぎる。普通から変になるならええけど、変から変はわからん」って、めちゃめちゃ言われましたね。だから、僕らなりに試行錯誤したんですけど、やっぱりウケないんですよ。
原田 学生とか、サラリーマンとか、野球部のバッテリーとか、普通の設定のものもやったんですけど、マジでウケない。二人とも太ってて、見た目がちょっとアニメキャラみたいじゃないですか。こんなバッテリーおらんわって思われちゃう。お客さんが感情移入できないんだと思います。
きん 緊張と緩和やと思って、まずは緊張させるシーンをつくろうとしても緊張が生まれない。
原田 僕らが普通の恰好をして、いくら真剣にしゃべってても誰も緊張してくれないんですよ。むしろ、余計にコミカルになる。見た目の緊張感がなさ過ぎて。
きん おそらくちょっと変な設定の方が、僕らは収まりがいいんですよ。お客さんのウケる方、ウケる方を探っていったら、自然とそっちに伸びていった感じはしますね。