『野犬』は大事に大事にしまっておきました
――『野犬』は、何年か前からあるネタですよね。
原田 つくったのは2019年ですね。2020年の準決勝でも一度、やってるんです。あのときはコロナの影響で、キャパ500人ぐらいの会場にお客さんを70人くらいしか入れてなかった。なので、ウケたという感覚はあったんですけど、いつものような爆発する感じじゃなくて。何とかなるかなと思ったんですけど、落ちちゃいましたね。
きん 準決勝は2本披露しなきゃいけないんですけど、もう1本のネタも、ちょっと伝わりにくいネタだったんですよね。
原田 でも、『野犬』はまたどこかでやるチャンスはきっとあると思っていたので、そこからはあんまり人前ではやらないようにして。
きん 大事に大事にしまっておきました。
原田 何を大事にしてんねんというネタですけど。
きん こんな汚いネタを。
――野犬に襲われているきんさんを、セーラー服とブリーフ姿の原田さんが「きらきらりん」という声とともにスティックを振りかざしながら撃退するというネタで。
きん あのネタはめっちゃ信頼していたんです。でも、一時的に封印して、今年に入ってまた解禁したら、最初の方、ぜんぜんウケなかったんですよ。それで2020年の動画を観返したら、当時は原田が痩せていて、めっちゃスピーディーに動けていることに気づいて。
――そんなに体型が変わったんですか。
原田 この2年で10キロぐらい太りました。野犬って動きも激しいし声も張らないといけないネタなので、この体型になってからやったら途中で吐きそうになって。だから、スピードを抑え気味にしてたんです。でも、どうやら、このネタの肝はスピードやぞと。それで舞台の袖から最速で登場するようにしたら、またウケるようになったんです。
きん お客さんの反応がこんなに変わるんかっていうぐらい変わりました。
原田 新しい発見でしたね。キモくてヤバそうなやつって、イメージ的に、だいたいゆっくり出てくるじゃないですか。でも、そうすると、ただの変態になってしまう。そこにスピードという意外性を加えると、「キモい」が「笑い」に転化するんです。
きん 動きがかわいらしくなるからですかね。
原田 でも、あのネタって僕の恰好がヤバいだけで、言ってることは割とカッコいいんですよ。
――ヒーローものですもんね。
原田 リハーサルのとき、普通の服装でやると、ぜんぜんウケない。基本、まったくボケてないんで。僕はカッコいいやろと思って、ノリノリでしゃべってるだけですからね。ただ、あの恰好をした瞬間、ウケるという仕組みになっているんです。
きん だから、何がおもろいのかわからないという人もいるかもしれませんね。