アメリカの光と闇を肌で感じたロサンゼルス支局時代

「私がアメリカにいた2015年からの4年間は、いろんな意味で国内外の動きが激しかった。特にトランプ大統領になってからは、分断や格差が表に出てきた、興味深い時でした。

アメリカが今まで抱えていた歪みや分断が一気に噴き出し、揺れ動きながら一方に傾いたらもう一方が激しくぶつかるダイナミックさを、目の当たりに出来ました。そんな時に、トランプ支持者も含めた一般の人たちの話を聞くのが、とにかく楽しくて刺激的だったんです」

少女時代に憧れ、テニス選手キャリアの原点ともなった、アメリカ。その国が大きく揺れた時代に現地で暮らし、大国の光と表裏の暗部にも直に触れたことは、長野さんの新聞記者のキャリアにおいても、一つの集大成となった。

グランドスラムのコートを飛び出し、大統領選取材の最前線へ! プロテニス選手から毎日新聞記者に転身した長野宏美の数奇なキャリア_3
ロサンゼルス勤務時代には、離れていたテニスの熱も再燃! なお写真中央、長野さんの隣に立つのは、元世界1位で元祖天才少女と呼ばれたトレーシー・オースチン

2019年に帰国し東京本社勤務となった今、長野さんの仕事は、デスクワークが中心となりつつある。それでも彼女の本質は、どこまでも記者でありアスリート。今でも可能な限り現場に足を運び、自身の体験や皮膚感覚を大切にしている。

「私は『石橋があっても、泳いで渡る』みたいなタイプなんです。ここを通れば安全ですよ、と言われているのに、『いいんです、私はこっちを泳いで行ってみたいので』と、苦しい方を選んでしまう。でもその方が面白いし、途中で大切な物が見つけられるかもしれない。私はやっぱり自分の身体を使って、色々と感じることが好きみたいです」

泳いで渡るのは苦しい道だが、予め最も困難な状況に備えていれば、橋が崩れても大丈夫という利点もあるだろう。自らの身体で水の温度や抵抗を感じ、手足で掻いて進んでいく――。
そんな風に長野さんは、持ち前の探求心で今日も世界の真理へとつき進んでいく。


取材・文/内田暁