「いつもとは違う」特別感を演出するための宣伝手法
――近年のTVアニメシリーズでは、珍しい4クールという放送期間に決めた理由はなぜですか?
尾崎 周年企画に当てるなら一気にドーンとやりたいと思いました。でも全部をアニメ化するのには何年もかかってしまうし、連載中のアニメ化ではないアドバンテージもあるということで、4クールでの傑作選にすることに決めたんです。
――とはいえ、一気に4クールではなく分割4クール(2022年10月〜2023年3月で2クール放送)の形を取っていますよね。2クール放送後に「第2期放送決定」と打ち出すこともできたと思うのですが、最初に「4クールやります!」と言い切ったのにはどんな意図があったのでしょうか。
尾崎 「周年記念のお祭りは永遠ではありません。だからこそ気合いを入れて楽しいものにするよ! スタンバイしておいてね!」という決意表明です。これは「寅年」であるご縁もあって元旦にアニメ化決定を解禁したことや、前もって第1クールに放送する全サブタイトルが載ったティザー動画をアップしたことなどにも言えるのですが、とにかく普段とは違うことをしたかったんです。
――2022年1月1日付けの産経新聞に掲載された全面広告は大きな話題になりましたよね。
尾崎 髙橋先生の新作「M A O」の連載中である『週刊少年サンデー』での解禁という選択もあった中、小学館さんから了承をいただけてありがたかったです。
森脇 最近は印刷所に回して配本する段階で、ネット上にリーク情報がアップされることもあり、本誌での宣伝手法をあまり取らないようにしているんです。なので、新聞での情報解禁は全く問題なかったですね。
尾崎 新聞での情報解禁もそうですが(キャラクターデザインを担当している)浅野直之さん描き下ろしのキャラクターイラストとキャスト写真のリンクビジュアルへの反響も大きかったです。Twitterフォロワー数も想定の倍以上を獲得することができました。しのぶと面堂ら他キャラクターのリンクビジュアルを追加したのも、この反響の大きさが後押ししました。
✬TVアニメ『#うる星やつら』✬
— 「うる星やつら」TVアニメ公式|10月13日より放送中 (@uy_allstars) January 5, 2022
#上坂すみれ さんとラムちゃんが一緒に写った“リンクビジュアル”公開中🖼️
HPでは、“Q.上坂さんにとって「うる星やつら」とは?”や、ラムちゃんを演じるにあたっての意気込みコメントが公開中✨ぜひご覧ください‼️https://t.co/d5LCIdUfUi pic.twitter.com/LGxd0XOVC0
✬TVアニメ『#うる星やつら』✬
— 「うる星やつら」TVアニメ公式|10月13日より放送中 (@uy_allstars) January 4, 2022
#神谷浩史 さんが、演じる諸星あたると手を合わせた“リンクビジュアル”が公開中🖼️
さらに、気合充分なキャストコメントもHPにて公開中ですので、ぜひご一読ください‼️https://t.co/d5LCIdCEvI pic.twitter.com/ivXUDiFI2v
――一方、初代アニメシリーズであたる役を演じた古川登志夫さん(今作はあたる父役)、ラム役の平野 文さん(今作はラム母役)の出演は、アニメ放送開始の直前に解禁したのは、なぜでしょう?
尾崎 アニメ化決定の発表をした段階で、様々なキャスト予想の声などが出てくるよりは、あたるとラムのキャスト発表は解禁と同日にしました。それだけ製作陣は新キャストのお二人を自信を持って紹介できると思っていました。
実は、このタイミングで古川さん、平野さんのご出演もご承諾頂いていたのですが、そちらについてはメインの新キャストが出揃ってた後の更なる嬉しいサプライズとして、後日発表することにしました。
アニメ作品の仕事を新規でお受けすることがあまり多くない戸田(恵子、あたる母役)さんが「『うる星やつら』なら」と髙橋(秀弥)監督のオファーを承諾してくださったこともあり、豪華すぎるあたるとラムの父母のキャスト4名は一気に発表することにしました。
✬ #うる星やつら✬#あたる父 #古川登志夫 さん#あたる母 #戸田恵子 さん#ラム父 #小山力也 さん#ラム母 #平野文 さん
— 「うる星やつら」TVアニメ公式|10月13日より放送中 (@uy_allstars) October 5, 2022
皆様からのコメント全文はHPに
て紹介中🎵https://t.co/xazoXX7yFY
📺放送情報
10月13日より
フジテレビ“#ノイタミナ ”ほかにて pic.twitter.com/avJm11NN5q
――最後に、注目してほしいポイントを教えてください。
森脇 キャラクターがとても魅力的なところですかね。特にあたるがカッコいいんですよ。原作だとスケベで軽薄、タフでおもしろいやつですけど、アニメで見たら「こいつカッコいい」と再発見できるようにリブートされていると思います。神谷さんの声も絶妙で……感動しました。
余談ですが、高橋先生の描くキャラで一番バレンタインにチョコをもらったのは犬夜叉でも殺生丸でもなく、あたるなんだそうですよ。
一同 意外!(笑)
岡本 言われてみれば、作中でもなんだかんだモテていますしね(笑)。ちなみに高橋先生も「アニメのあたるはすごくハンサムだ」とおっしゃっていたので、原作とは、また違う魅力があるのかもしれません。
尾崎 監督陣は、あたるに対して「ネガキャンにならない程度にどこまで表現するか」とご苦労されていました。でも苦労するということは主役の証ですから。高橋先生も「主人公なんだから、いろんな災難を食らいなさい」とおっしゃっていましたし(笑)。
岡本 あたるがカッコいいのはもちろん、動くラムちゃんは最強にかわいいなと思いました。クルクル回っているシーンなんて、何度も巻き戻して見たくなります(笑)。髪の毛のグラデーションもアニメならではだなと。
尾崎 原作のラムちゃんの髪色が固定の1色で塗られているわけではなかったので、新アニメ化でどう表現できるかは、何回もトライアンドエラーをされていたそうで、岡本さんのコメントは監督やスタッフのみなさんとても喜ばれると思います。
森脇 アニメを見てキャラクターの魅力を再発見できる部分がすごく多いので、ぜひ注目して見てもらえたらと思います。
岡本 それから今作を見て『うる星やつら』のおもしろさが、今の時代でも通じるということを改めてすごいなと思いました。ラブコメという普遍的な題材の強さでもあると思いますが、今、世に出ているラブコメ作品とは違う関係性が描かれているのが『うる星やつら』なんですよね。
今作をキッカケに改めてあたるとラムの関係性を振り返ってもらいながら、新規の方たちに1周まわった新しいラブコメの形を知ってほしいです。
取材・文/阿部裕華