『ジュラシック・パーク』旋風
この年の上半期(1~6月号)の表紙、下半期と比べてみると、おや?と思われないだろうか。極端なアップにトリミングした写真、Rだけを白抜きにしたロゴ。見出しの文字は小さく、数も抑え気味だ。どうやらこの時期、「ロードショー」はクオリティマガジン風を狙ってみたらしい。大人の読者獲得を試みたのだろうか。
しかし…はかばかしい成果は上がらなかったのか、7月号からはこれまでどおり、アイドル風ポートレートににぎやかな惹句が躍る表紙に戻っている。
それもそのはず、1993年は子供観客が熱狂した『ジュラシック・パーク』(1993)の年だ。マイクル・クライトンの原作をもとに、ヒットメーカーのスティーヴン・スピルバーグ監督が映画化した同作は、リアルすぎる恐竜が世界中の観客の度肝を抜いた。
それまでは一部でしか使われることがなかったコンピューター・グラフィックスが、ハリウッド映画に欠かせないツールになったのもこの作品がきっかけである。
もっとも、『ジュラシック・パーク』に登場する大部分の恐竜はアニマトロニクスを使用しており、CGを使用したシーンは全体のうち7分程度しかない。あれから30年近く経過し、テクノロジーが飛躍的な進歩を遂げたにもかかわらず、同作の恐竜がそれほど古びて見えないのは、こうした工夫の賜物といえる。
ロードショーは7月号の特報を経て、「LA発『ジュラシック・パーク』を見た!!」(8月号)、「『ジュラシック・パーク』大辞典」(9月号)、「『ジュラシック・パーク』大ヒット御礼」(10月号)と大プッシュ。その甲斐もあってか、『ジュラシック・パーク』の配給収入は83億円に到達し1993年のトップとなった。
ちなみに、2位以降も『ボディガード』『アラジン』『ホーム・アローン2』(ここまで1992製作)『逃亡者』(1993)とハリウッド映画が独占している。
『ジュラシック・パーク』でハモンドの孫娘レックス役を演じたアリアナ・リチャーズは、9月号の表紙を飾る。そればかりか、日本でアルバム『First Love』をリリース。人気者に日本でレコードデビューさせるのが、当時は当たり前だったようだ。現在は女優を引退し、画家として成功している。
一方、レックスの弟ティム役を演じたジョセフ・マゼロは、大人の役者に成長。スティーヴン・スピルバーグとトム・ハンクスが製作総指揮を務める戦争ドラマ『ザ・パシフィック』(2010)や、大ヒット映画『ボヘミアン・ラプソディ』(2018)に出演している。